妊娠初期の中絶には大きな壁がある、米国や英国といった先進国での調査

妊婦が妊娠初期に中絶したいと望んだとしても、社会的には非常に難しい状況に置かれていると分かった。ファミリー・プランニング・アンド・リプロダクティブ・ヘルス・ケア誌において2015年6月26日に報告されている。

安全ではない中絶が起きる原因とは

世界保健機関(WHO)によると、先進国において赤ちゃん100人が無事に生まれるごとに、およそ4件の「安全ではない」中絶が行われているという。しかし、合法的に適切に行われれば、中絶は手術の中で最も安全であるという。一方で、中絶をめぐっては社会的に複雑な問題をはらむとよく知られている(米国の避妊に対する保険補償、政策と宗教の間に溝を参照)。研究グループは、先進国における妊婦の中絶に関して、どのような状況に置かれているのかについて調査を行った。



5人に1人の医者が中絶に対して反対

研究グループは、1993年から2014年にかけて英語で発表された入手可能な証拠から、妊娠の最初の3カ月中に中絶を受けるよう促すものと妨げるものを検証した。関連する論文2511件中、38件が初期中絶に関するものだった。その結果、中絶の主な壁となっているものは、中絶に対する道徳的対立、適切なトレーニングの不足、手術を行える医者または行いたい医者が少ない、中絶に思想的に反対しているスタッフによる嫌がらせ、特に田舎において設備が不足していることだった。医者が中絶に対して反対している場合は、米国アイダホ州の農村部で医者3人中1人、英国のホームドクターでは5人中1人だった。欧米では宗教的に中絶への抵抗は強い場合は珍しくはない。社会的な理由から中絶が行いにくくなっていわけだ。

医療機関の態度は大切

医療スタッフの態度は治療への妨害となるだけではなく、女性の手続きの経験にも影響する。あるカナダの研究では、10人に1人以上の女性が中絶のクリニックのスタッフの態度がひどかったと答え、別の研究ではほとんど半数が病院のスタッフの誰もサポートしてくれなかったと答えている。先進国の女性は、世界中の他の地域よりも宗教上の対立に直面することが少ないにもかかわらず、妊娠初期の中絶はとても難しい状況におかれていることが明らかになってきた。日本でも中絶は原則的には違法になっているだけに、社会的にはタブーという面はある。とはいえ、必要に迫られて中絶をせざるを得ない女性は多い。問題の所在を確かにして、必要な対応策を取れるようにするのは意味がある。



文献情報

The Journal of Family Planning & Reproductive Health Care

タイトル
Doran F et al. Barriers and facilitators of access to first-trimester abortion services for women in the developed world: a systematic review.J Fam Plann Reprod Health Care.2015;41:170-80.

Barriers and facilitators of access to first-trimester abortion services for women in the developed world: a systematic review. – PubMed – NCBI
J Fam Plann Reprod Health Care. 2015 Jul;41(3):170-80. doi: 10.1136/jfprhc-2013-100862.