陣痛促進剤って何?リスクや使う時期、出産までの流れを解説

陣痛促進剤はお産を後押ししてくれる心強い味方ですが、反面リスクが注目を集めています。ここでは陣痛促進剤の効果と出産までの流れ、使う時期、リスクや自閉症との関係、無痛分娩での使い方、費用など、使うことを迷っている方に向けくわしくご紹介いたします。

陣痛促進剤とは

子宮収縮を強め有効な陣痛をおこす

お産は自然に進むもの…と思われがちですが、本来危険な状況になる可能性も秘めています。よってお産前からリスクが予測されていたり、お産の途中で異常の兆候がみられた場合は、ママと赤ちゃんの安全を優先して医学的な介入がなされます。その一つの手段として子宮収縮剤である、「分娩誘発剤」や「陣痛促進剤」を使うことがあります。

○分娩誘発剤:陣痛が来てもよい時期になっても自然に来ないときに、薬を使って人工的に陣痛を誘発しお産にもっていくことをいいます。分娩誘発の適応には、妊娠の継続によって母児が危険な状態になると判断される「医学的適応」と、計画的に陣痛を誘発する「社会的適応」があります。

○陣痛促進剤:お産の途中で微弱陣痛となってお産の進行がおくれたときに、薬を使って人工的に陣痛を促進させることをいいます。薬を使うことで有効な子宮収縮を起こし、母児のストレスを軽減させお産をスムーズに進めます。

いずれにしても、正常なお産に近づけるための手段として、ママと赤ちゃんの安全のために使われるのですね。また薬の感受性には個人差があるため、後に述べる副作用に十分注意しながら使われます。

陣痛促進剤は内服と注射の2通りある

陣痛促進剤として使われる薬剤には、オキシトシン製剤とプロスタグランジン製剤があります。オキシトシンは母体の脳下垂体と呼ばれる部位から分泌されるホルモンで、子宮の筋肉に作用してお産の時には陣痛を起こしたり、お産後はお乳の筋肉に作用して乳汁分泌を促します。

またプロスタグランディンは、本来体内で自然につくられるホルモンで、筋肉に働きかけて収縮する力を強める作用があります。お産の時には子宮の筋肉に作用して陣痛を起こしたり、陣痛を強めたりする働きがあります。

方法として経口与薬(内服)と静脈内注射(点滴)がありますが、同時に使うと相乗効果による「過強陣痛」が起こりやすいため、併用することは禁じられています。ちなみに内服の場合は点滴に比べて効果がゆっくりで調節しにくいため、点滴する時よりも十分な監視下での使用がすすめられています。



使用した場合のリスク

過強陣痛(かきょうじんつう)が起こることがある

この薬を使用する上で一番のリスクは、「過強陣痛」です。これは十分な陣痛があるのになんらかの原因でお産の進行がさまたげられ、そのため強く長い発作と短い間歇(かんけつ)によって子宮収縮が異常に強く起こることをいいます。

一般的に、陣痛促進剤は強制的に子宮の筋肉は収縮させて、赤ちゃんを外に出そうとする働きがあります。しかし、ママの骨盤や軟産道(なんさんどう)に問題があるときや、赤ちゃん側の問題で子宮口まで降りてくるのが難しいケースがあります。そんな場合でも陣痛促進剤を使うと、本来あるべき程度の陣痛(子宮収縮)まで高めるため、子宮口の準備はできていないのに陣痛だけが過剰に起こってしまい、結果として「過強陣痛」となってしまうのです。

陣痛促進剤は、正しく使えば過剰な陣痛が避けられるし、お産の進行も早くなって自然な分娩に繋がるという大きなメリットがあります。通常、医師や看護師は、赤ちゃんの心音や陣痛の強さを注意深くみながら投与しているので、仮に問題が起こっても早めに気づき対処することが可能です。ただママが何か異常を感じた場合は、すぐに訴えるようにしましょう。

次に過強陣痛のもととも言える、お産を妨げる原因は一体何なのか?これを知っておけば事前に心構えもできるのでみていきたいと思います。

お産の進行を妨げる原因について

前述した過強陣痛の原因となる、お産の進行を妨げるものには下記のような原因が考えられます。

○ママ側の原因
・狭骨盤:骨産道(赤ちゃんの通り道)の一部または全部が平均よりも狭い
・児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう):胎児の頭と母体の骨盤の大きさが釣り合わない
・軟産道強靭(なんさんどうきょうじん)…子宮口や膣がかたくて広がりにくい

○赤ちゃん側の原因
・巨大児:出生時体重が4000g以上あったりママが糖尿病を合併している場合、また出産予定日を過ぎた場合に多くみられる
・赤ちゃんの位置や体勢が悪い:骨盤位(さかご)や横位(胎児が横向き)である

出産前にある程度予測されることなので、その場合は前もって医師からいざという時の対応として、子宮収縮剤の使用や帝王切開術などについて説明されることもあります。

過強陣痛が進行すると子宮破裂や胎児仮死、脳性麻痺になる可能性も

過強陣痛は、母体や赤ちゃんに大きなストレスを与えるだけでなく、進行すると子宮破裂や胎児仮死になる可能性もあると言われています。また無事に産まれた場合でも、強い子宮収縮で酸欠状態が続いたことによって、脳性麻痺をまねく恐れもあるとされています。このようなことから薬剤による陣痛促進を行う場合、日本産婦人科学会では使用上のガイドラインが定められています。

○投与前に、妊婦さんに使用に関するインフォームドコンセント(説明と同意)を得る
○使用する場合、投与前から分娩監視装置をつけて子宮収縮と胎児の心拍数を連続的に記録する
○点滴時は輸液ポンプを使用し、増量する場合は30分以上の間隔をあけるなど慎重に行う
○1時間おきに子宮収縮や母体の状態を評価し、モニター監視は医師や看護師が定期的に行う

これらは一部抜粋したものですが、実際はもっと細かく定められています。このように正しい使い方をしていれば、過強陣痛はほとんど防ぐことができるので、あまり心配しすぎないで下さいね。

代表的異常分娩とその管理
*日本産婦人科学会より参考にしました

薬剤の効きぐあいには個人差があります

薬剤の効きぐあい(感受性)には個人差があるため、使用する際は妊婦さんの反応をみながらそのつど使用量を調整することが必要です。またその反応をみることなく、あらかじめ使用量を決めておくということは、とても難しいものです。同じ量を投与しても、まったく陣痛が起こらない方もいれば急激に起こる方もいるからです。

例えば投与後すぐに陣痛が起こり、大きな痛みもなく楽に産めたという人がいる一方で、24時間以上投与していてもなかなか陣痛が起らず数日やっと効いてきた、という人もいます。なので、経産婦でも1人目と2人目のお産が違うように、薬の効き目も個人差があって当然よね、といった大らかな気持ちを持つことが大切かもしれませんね。

自閉症との関係性は?

陣痛促進剤と自閉症に「関連」はあるが、因果関係は証明されていない

陣痛促進剤の使用と自閉症の発症率について、心配している方もいるのではないでしょうか?少し難しいお話になりますが、関連性についてご説明いたしますね。

事の発端は2013年、米国医師会(AMA)が発行する医学誌「JAMA小児科学」に発表された、ある論文でした。その内容は、「陣痛促進剤を使用した妊婦は自閉症の子供を産むリスクが高くなるかもしれない」といったものでしたが、結論から言うと「陣痛の誘発=発達障害の原因」を断定するには至っていません。

研究では、「米国ノースカロライナ州の8年間にわたる出生記録62万5000件を調査し、その結果、陣痛の誘発・強化の両方を行った場合は、陣痛を人為的に発生させない場合に比べて、男の子の自閉症を発症するリスクが35%高くなることに関連していることがわかった」としています(ちなみに女の子では微増)。

これは、「陣痛促進剤であるオキシトシンやプロスタグランジンの使用によって、胎児のオキシトシン受容体が変化し、自閉症を発症するのではないか」という説が根底にあります。しかし、現在ある証拠からは、陣痛促進剤と自閉症の因果関係は証明されておらず、米国でも日本でも陣痛促進剤使用のガイドラインを変更するには至っていないのが実情です。

因果関係については、高齢出産とも関わっていると言われており、これを受けて薬剤使用に慎重になった妊婦さんがいることは否めません。とはいえ、使用しなければ赤ちゃんに他のリスクが発生したり、母児の命に関わることもあるので、医師の考えをしっかり聞き納得した上で行っていただけたら…と思います。



陣痛促進剤を使用した時の痛み

まずはお産と陣痛の関係をおさらい

そもそも陣痛とは何なのでしょうか?一般的に臨月になると、「前駆陣痛」とよばれる不規則で強弱のある腹痛が生じます。この痛みは子宮の収縮から起こるもので、これを「陣痛」と呼んでいます。この時点での子宮収縮はさほど強くないため、下腹部に少し痛みを感じる程度で家事をする余裕もあります。

その後、子宮収縮は規則的かつ間隔が短くなり、家事どころか眠れなくなるほど、腰からおしりにかけての強い痛みが生じるようになります。これを「本陣痛」と言い、この一連の流れがなければ赤ちゃんは外の世界に出ることができません。つまり陣痛は、お産する上でなくてはならない自然の摂理なのです。

痛みの感じ方には個人差がある

陣痛促進剤を使ってお産をすると、自然分娩よりも痛みがキツイと感じると聞きますが、実際はどうなのでしょう?それでなくても陣痛は痛いと聞くのに、それ以上なんて…と不安を感じる方もいるかもしれません。

実は、自然分娩より痛みが強いと感じるのには、理由があります。お産の所要時間は初産婦で10~12時間、経産婦で6~8時間と言われていますが、陣痛促進剤で人工的に陣痛をうながす場合、薬の作用で強制的に子宮収縮させて有効な陣痛につなげます。つまり、自然分娩のように何時間もかけて、徐々に子宮を収縮させて心と体を準備するのではなく、短時間に凝縮するわけです。これによって、通常では「本陣痛」がくる前に起こる、予行演習的な「前駆陣痛」も短くなるため、ママは心も体もついていけずマックスに近い痛みに感じることがあるようです。

ただし、痛みの域値は個人差が大きいもの。実際に使った方の体験談を聞くと、「自然陣痛の時よりお産が速く進んで楽に産めた」とか「陣痛が強まり体力的に限界に来てたので助かった」いった意見も多く聞かれます。陣痛促進剤を使うともっとつらくなる…といった思いこみや不安は、痛みをさらに助長させるので好ましくありません。産まれてくる赤ちゃんのためにも、ここは大らかな気持ちでどーんと構え、医師や看護師さんにおまかせしていただければと思います。

陣痛促進剤はいつ使われる?

陣痛促進剤は、お産の途中で「微弱陣痛」となって進行がおくれ、ママや赤ちゃんの安全が脅かされ何らかの影響があると判断された場合に使われます。「微弱陣痛」とは、自然陣痛が起こった後も何らかの理由で陣痛が強くならなかったり、陣痛が弱かったりしてお産が進行しない状態を言います。陣痛時間が長くなると、ママの体力消耗が激しくなったり、赤ちゃんの心音が低下するなど、母児の安全に支障がきたされるため陣痛促進剤の使用が検討されます。

また陣痛が来る前に医学的または計画的適応があって使われる「分娩促進剤」は、次のようなケースに使用されることが多いです。

1.予定日を2週間以上過ぎた「過産期」のとき

妊娠37週から42週までのお産は「正産期」といって正常な出産であるのに対し、予定日を過ぎた42週以後のお産を「過産期」と言い出産のリスクが高まります。例えば胎児への酸素や栄養供給が低下し、胎児に対してストレスが増加する「胎盤機能不全」になる恐れがあります。また、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、赤ちゃんを守る羊水の量が減ってしまうことで、出産時に臍帯を圧迫してしまい赤ちゃんへ危険が及ぶ可能性があると言われています。

2.前期破水し感染の恐れがあるとき

一般的に破水とは陣痛の後に起こるものですが、陣痛が始まる前に破水が起こることを「前期破水」といいます。正期産であればその後、自然に陣痛が起こり出産に至ることが多いのですが、中には24時間以上たっても陣痛が始まらないケースがあります。この場合、赤ちゃんを守るバリケードがなくなるため、通常より細菌感染のリスクが高まると言われています。

3.妊娠継続が母体の危険をまねく恐れがあるとき

妊娠高血圧症候群とは、「妊娠20週以降~分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または高血圧にたんぱく尿を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの」と日本産科婦人科学会で定義されています。いわゆる妊娠中毒症ですが、このような場合やもともとママ自身に持病があり、 妊娠を継続することで母体と赤ちゃんに危険があると判断された場合などに、自然陣痛を待たずに分娩誘発剤を使用することがあります。

4.本人の事情や医師の判断により計画分娩を行うとき

計画分娩とは、妊婦さん側の希望や上記のように医師が母体の安全のために必要だと判断した場合に、予定した日時に人為的に陣痛を誘発し出産させることをいいます。事前に出産予定日が決まっているため、以下のようなメリットがあると言われています。

○リスクのあるお産の場合、積極的な医療介入が行われるため安全
○通常より短時間でお産ができ、ママや赤ちゃんへの負担が軽くなる
○お産の準備が前もってしやすく精神面でリラックスできる
○夫が立ち会い分娩をのぞむ時など、家族のスケジュール調整がしやすい

計画分娩を行う場合の流れ

妊娠37週以降でお産の条件が整った時期に行われます。出産日については、リスクがある場合は医師の判断に任せられますが、そうでない場合は希望日を取り入れてもらうことが可能です。陣痛が来ていない、またはなかなか子宮口が開かない時は、まず子宮口を広げるためにバルーンを挿入し、徐々に膨らませて広げます。

次に子宮口がやわらかくなって開いてきたら、陣痛促進剤が点滴で投与されます。また必要があれば、人工破膜(人工的に破水させること)や会陰切開、吸引分娩などの処置も行われます。麻酔は規則的な陣痛が確認されてから行うことが多いですが、最初から行うこともあるようです。

計画分娩には多くのメリットがありますが、医療的な介入が多いぶん不安を覚える方もいるかもしれません。心配や不安定な気持ちは緊張を招き、スムーズなお産の妨げになることもあるので、気になることがあったら医師や看護師にぜひ相談してくださいね。

陣痛促進剤の使われ方、薬の種類

使われ方は?

○経口与薬(内服)の場合

経口与薬として錠剤(内服)を用いる場合、子宮口があまり開いていない方や初産婦さんなどによく使われます。内服の方法は、1時間おきに1錠づつ、最大で6回ぐらいまで飲みます。効き目はゆっくりなので、徐々に痛みを感じるようになり、自然な陣痛に近いかもしれません。大体3~4回ぐらい飲んだところで、おなかの張りや痛みを感じる方が多いようです。

効き目がゆっくりなため、内服したからといってすぐに産まれる、ということはありませんが、もし有効な陣痛に繋がれば内服はその時点で中止になります。内服は点滴のように微調整がしにくいため、飲む前に分娩監視装置などを用いて、陣痛の強さや間隔、赤ちゃんの心音をしっかり確認していきます。

○静脈内注射(点滴)の場合

初めからある程度、子宮口がやわらかくなって状態のよい時や、内服しても陣痛がついてこない場合は、点滴を開始していきます。プラスチックのやわらかい針を、静脈内に留置し(挿入時は通常の固い針なので多少の痛みあり)、数滴からスタートします。

その後は、陣痛の強さや赤ちゃんの心音をモニターしつつ、40分以上の間隔をあけて、お産に必要な陣痛がつくまで徐々に増量していきます。通常は分娩監視装置でチェックしつつ、精密輸液ポンプを用いて投与量を厳密に管理していくため、前述した過強陣痛がおこることはほぼありません。

もし、有効な陣痛になれば増量はせず、そのまま経過観察します。効き目は前述したとおり個人差が大きいですが、早い方で30分後から陣痛がついてお産に至る方もいれば、24時間たっても陣痛が起こらない方もいます。

陣痛促進剤としてよく使われる薬剤

陣痛促進剤には以下の2つの子宮収縮剤がよく使用されます。

○オキシトシン製剤:商品名「アトニン」
脳下垂体から分泌されるホルモンで、子宮筋収縮作用をもちます。自然分娩の際もこのホルモンの働きで陣痛が起こっているといわれています。点滴に混ぜて持続的に静脈内に投与されることが多くあります。

○プロスタグランディン(PG)製剤
子宮収縮作用や子宮の出口を柔らかくする熟化作用をもち、注射薬と内服があります。
・プロスタグランディンF2α製剤(注射):商品名「プロスタルモンF注射液」、「プロスタグランジンF2α注射液」
・プロスタグランディンE2製剤(内服):商品名「プロスタグランジンE2錠」、「プロスタルモンE錠」

ちなみに同じプロスタグランディン製剤で、プロスタグランディンE1製剤というのもありますが、これは流産や死産の時に使用される強力な子宮収縮剤で、微弱陣痛の際などに使用されることはありません。(商品名は「プレグランディン膣坐剤」)

陣痛促進剤を使用した場合の費用

使う目的にもよるが、多くは「自由(自費)診療」となる

陣痛促進剤は、健康保険が適応されるケースとされないケースがあることをご存じでしょうか?保険が適応されるのは、分娩中に微弱陣痛などが起こり医師の判断で治療として緊急的に使われた場合です。しかし、陣痛がつく前に、分娩を誘発する目的で使われる場合は保険は適用されないことが多いようです。

また個人で入っている医療保険の場合、契約内容によって適応されるかどうかは異なってくるので、加入先に確認することをおすすめします。

費用は陣痛促進剤の使用量と比例する

陣痛促進剤の費用って、一体どの程度かかるのでしょうか?これは投与した量によってずいぶん差があるようです。前述したように薬の感受性には個人差があるので、少量で効果が得られた場合は負担する費用も少なくてすみますが、なかなか効果が得られず薬の使用量が増え続けた場合は、そのぶん余計にかかってしまいます。

そのため幅がありますが、およそ1万円~5万円程度が通常のお産の費用に上乗せされることが多いようです。もし気になる場合は、入院するまでに医師に確認することをおすすめします。

陣痛促進剤が効かない場合は帝王切開になることも

経膣分娩が困難と判断された場合、帝王切開術の適応となる

陣痛促進剤を投与しているのに有効な陣痛がつかず、赤ちゃんの状態やお産の進行状況によって経膣分娩が難しいと判断された場合、帝王切開術の適応となり手術によるお産となります。 例えば赤ちゃんの心音が弱くなって危険な時や、赤ちゃんがうまく回旋できずママの骨盤に引っ掛かってそれ以上出てこれない時、へその緒が赤ちゃんの首のまわりに巻きついて圧迫され危険な時など…帝王切開術に至るには、いろいろなケースがあります。

妊婦さんの多くは自然分娩を目指してお産にのぞむため、帝王切開術をしたことで望んでいたお産ではなかった、と悔やむ方も中にはいるかもしれません。しかしやむを得ず帝王切開術が選択された場合でも、それが安全に出産するため赤ちゃんにとって最善の方法だったのだ…と思い、気持ちを切りかえることが大切です。どんな形であれ、無事に産まれてきてくれた奇跡・喜びにくらべれば、それに至る手段なんてきっと小さなことに思えてくるはずです。

無痛分娩で陣痛促進剤を使う場合

無痛分娩とは?

日本でも徐々に知られてきた無痛分娩。実際の手順やメリットはどんなものなのか、リスクはあるのかなど、興味はあるけれどよくわからないといった方も多いのではないでしょうか?

無痛分娩とは、「分娩時に腰から局所麻酔薬を入れることによって、主に脊髄から出る知覚神経(痛み刺激を脳に伝える神経)だけを麻痺させ、陣痛の痛みをやわらげてお産を行う方法」です。具体的にいうと背中の硬膜外腔に針を刺し、そこに細いチューブをつなげて固定し、ママの状態に合わせて麻酔薬を少量から投与していきます。これによって、腰~足先までの感覚は鈍くなりますが、お腹のはりは残るため、いきむこともできます。目的はもちろん痛みを取り除くことにありますが、他にも以下のようなメリットがあります。

○痛みや恐怖心から生じる緊張を取り去るので、分娩がスムーズに進む
○お産が長引き母体の疲労がひどくなっている場合、これを軽減できる
○リラックスしてお産にのぞめるため、りきまず赤ちゃんに十分な酸素が送れる
○高血圧や心臓病、呼吸器疾患がある場合は、ストレスの軽減になり安全なお産につながる
○もし帝王切開が必要となった場合、そのまま移行しやすい

お産の痛みそのものだけでなく、不安や恐怖といった精神的な苦痛も軽減できるため、痛みに弱い方やパニックになりやすい方はやってみたいと思うかもしれませんね。しかし無痛分娩にはリスクもあるので、その点も知っておくと安心です。

無痛分娩のリスク

一般的な無痛分娩のリスクには以下のようなものがあります。

○頭痛、吐き気、血圧上昇、神経障害など副作用が起こる可能性がある
○麻酔に使われる薬剤によって、子宮の収縮力が弱くなりやすく微弱陣痛を起こしやすい
○いきみが思うようにできず、陣痛促進剤を使用したり、吸引分娩や鉗子分娩になる確率が増える

無痛分娩で陣痛促進剤を使う場合、一番のリスクはやはり「過強陣痛」になることです。無痛分娩は微弱陣痛を起こしやすいため、陣痛促進剤を使うケースが増えますが、過強陣痛になったとしても痛みが取り除かれているため、気づかず悪化してしまうことがあると言われています。ただし前述した通り、この薬剤を取り扱う医療者側も、この薬剤がハイリスクであることは十分周知しており、ガイドラインにのっとって注意深く行うので、過強陣痛に気づかないことは少ないようです。

どのタイミングで陣痛促進剤を使う?

実際のどのようにして無痛分娩を行っているかは、医療施設によって差がありますが、大きく分けて「計画分娩ではない無痛分娩」と「計画分娩としての無痛分娩」の2通りがあります。後者についてはすでに述べましたので、ここでは前者の「計画分娩ではない無痛分娩」でのお産の流れを説明します。

計画分娩でない場合は基本的に自然な陣痛を待ち、ある程度陣痛がつくまで麻酔しないことが多いようです。そして子宮口が3〜4cm開いたら、陣痛が5分間隔になったら…など施設によって多少違いがありますが、基準を満たせば麻酔をかけ痛みをやわらげます。自然な陣痛を待つため、当然自分で出産日を決められないのが計画分娩との大きな違いです。

麻酔の量についても、「最初は弱めにして陣痛がわかるようにし、子宮口が全開になった時点で麻酔を強くした。赤ちゃんがいつ出てきたのも全くわからなかったし痛くなかった」というケースもあれば、「子宮口が全開になった時点で少し麻酔を弱め、最後は自力でいきみ赤ちゃんが出る瞬間も産んだ感覚はあった」など、痛みのコントロール方法には違いがあるので、自分の希望する方法をしている産院を選びましょう。

また、同時に24時間無痛分娩の対応がOKかどうかも注意したいところです。例えば日中は可能だけど夜間は対応できないとか、土日祝日は対応できないといった施設もあるので、よく確認することをおすすめします。

陣痛促進剤は使わない方がいいの?

陣痛促進剤を使う理由は、前述したとおりさまざまです。自然に出産できるのなら、なるべく促進剤は使わない方が良いのでしょうが、お産がうまく進まない場合は赤ちゃんの事を考えて、使わざるをえないことも多々あります。もともとお産にはリスクがつきもので、予想していなかったことが起こる可能性はいつだってあるのです。

陣痛促進剤については、ネガティブな情報もあふれているため不安に思われることもあるでしょう。ただ、促進剤を使わなければ赤ちゃんやママに危険が及んでしまうことも実際にあり、仮に帝王切開という選択をしても、それにもリスクは伴います。

そのためにも万が一、促進剤を使うことになった時の心構えとして、その方針を前もってしっかり聞いておくことは大切です。ネットではいろいろな情報が得られますが、個別性はありませんのでやはり医師に尋ねるのが確実です。なるべく不安を軽減させた状態でお産にのぞめるといいですね。

先輩ママの体験談

実際に陣痛促進剤を使って出産したママ達の貴重な声を集めてみました。こんな風に経験を語ってくれると「自分だけじゃないんだ」と思え、なんだか心強いですね。よかったらぜひ参考にしてみてくださいね。

母子ともに無事に出産するための選択を

陣痛促進剤は心配な副作用もありますが、うまく使えばなかなか進まないお産を後押ししてくれる、味方のような存在でもあります。確かに促進剤による事故も起こっていますが、お産のプロである現場の医師や看護師達は、それを十分知った上で密な観察を行い、わずかな変化も見逃さないようにしっかり見守っています。

ですから1人で不安を抱え込まず、心配なことがあれば相談し、出産日までにママ自身が納得してお産にのぞめるようになっていただけたらと思います。どんな形の出産になったとしても、何よりも大事なことは赤ちゃんの命を守ること。産まれてくる赤ちゃんもきっとママに会いたくて必死に出てくるので、一緒に頑張りましょうね。