分娩にはどんな方法が?自然分娩の流れ、無痛分娩、吸引分娩や費用についても解説

「分娩」と一言でいっても、その方法は千差万別。事前に選べるものもあれば、何らかのトラブルで分娩方法が変わることも。そのため、事前にどんな種類があるかを知っておくと安心ですよね。標準的な経膣分娩の流れや起こりうる分娩方法の概要をご紹介していきましょう。

分娩方法には様々な種類が

「分娩」や「出産」と一言でいっても、妊産婦が100人いれば出産も100通り。2人以上産んでも毎回違うのが出産というものです。
無痛分娩のように選べるもの、予定帝王切開のようにあらかじめ決まるものもあれば、スタンダードな経膣分娩でも何らかのトラブルで安全のための医療行為が行われることもあります。



通常の経膣分娩の流れ

まずはいわゆる自然分娩といわれる分娩の流れをご紹介していきます。

陣痛

陣痛は赤ちゃんを押し出すために子宮が収縮するときに起きる痛み。痛みはだんだん強く、間隔は短くなっていき、出産はこの収縮を繰り返して進んでいきます。

この本番の陣痛、すなわち本陣痛の前に、前駆陣痛というものがある人もいます。これは本陣痛の予行演習や準備運動のようなもの。

前駆陣痛は痛みの間隔がバラバラだったり、強くなったと思ったら次は弱まったりという具合で不規則なものです。途中で治まる人もいれば、そのまま陣痛へ進む場合などさまざまです。

本陣痛の場合は痛みはだんだん強く、間隔は短くなっていき、陣痛が10分間隔になるといよいよ「お産の始まり」です。多くの場合、初産婦で5~10分、経産婦で10~15分間隔になったタイミングで産院に連絡をして入院することになります。

分娩第1期(開口期)

陣痛が10分間隔になったところからは分娩第1期~第3期に分けられます。
最初の分娩第1期は、出産の徴候があってから、子宮口が全開大になるまでの期間のことで、3つの期間の中で最も時間がかかり、初産婦で10~12時間、経産婦で5~6時間程度のことが多いです。

陣痛がスタートしたばかりのころは、10分間隔程度でまだ心身ともに余裕があります。
その後5~6分間隔になる頃から痛みが増してきて、子宮口が全開大になる直前には陣痛は2~3分間隔で起きるようになり、いきみたい感じも出てきます。
子宮口が全開大になる前にいきむと、子宮頸管の裂傷などにつながるので、いきみを逃して過ごします。

分娩第2期(娩出期)

分娩第2期とは、子宮口が全開大になってから、赤ちゃんが誕生するまでの時期です。
助産師のサポートに従って、陣痛の波に合わせて押し出すようにいきみます。

いきみを繰り返しているうちに、赤ちゃんの頭が見え隠れする「排臨(はいりん)」という状態になり、その後、頭が見えたままになる「発露(はつろ)」という状態になります。
発露の状態になったら頭が少しずつ出てきて、間もなく赤ちゃんの全身が出てきます。

分娩第3期(後産期)

赤ちゃんが無事に生まれたあと、赤ちゃんに栄養や酸素を送り続けていた胎盤が、役目を終えて出てこようとします。この時期が分娩第3期です。

赤ちゃんが誕生してから10~20分後に出てくることが多いですが、自然に胎盤がはがれるのを待っていると出血量が多くなることもあるので、子宮収縮薬を投与して早めに排出することもあります。
痛みもありますが、陣痛に比べるととても軽いので、ほとんど感じない人も。かかる時間も数分程度です。胎盤が排出されて、やっと分娩は終了です。

分娩時に取り入れたい方法

自然分娩時では呼吸法を取り入れることでより分娩をスムーズに進めることができます。リラックスするためにも事前に練習しておくとよいでしょう。
代表的な方法をご紹介していきましょう。

ラマーズ法

フランスのラマーズ博士が創案した、体の緊張を和らげる「弛緩法」と、その補助動作である「呼吸法」で、出産を乗り越える方法です。

人間の体は、ある1つの刺激に意識を集中させていると、ほかの刺激を弱く感じるようにできています。この性質を利用して、陣痛中に「ヒッヒッフー」の呼吸に意識を集中させて心を落ち着かせることで、痛みを緩和させます。
息を吸うことより吐くことに意識を集中させ、十分に吐くのがポイントです。妊娠中から呼吸法やリラックス法を練習して出産に臨みましょう。

ソフロロジー式分娩法

ソフロロジーとは、精神の安定と調和を得るための学問です。それを出産に応用したのがソフロロジー式分娩法。体と心をリラックスさせ、出産を前向きに考える分娩方法です。

出産に伴う痛みは「つらいもの」ではなく、赤ちゃんを産み出すために必要なエネルギーと考えることで、出産への恐怖心は赤ちゃんと会える喜びに変わり、出産を「ママと赤ちゃんの共同作業」ととらえることで母性が養われます。
妊娠中から出産に対するイメージを高めるトレーニングを繰り返し行ったり、リラックスするために呼吸法を練習します。



無痛分娩や和痛分娩

無痛分娩と和痛分娩の違い

一般的に無痛分娩は麻酔を使って陣痛の痛みを軽減する出産スタイルのことを指します。産院によりますが、全ての痛みを完全に取り除くわけではなく、ピーク時のつらい痛みを取り除くことで、出産に対する不安感を軽減し、リラックスして出産に臨むことを目指すものです。

一方、和痛分娩は「出産時の痛みを和らげる分娩方法」。その中には上記の麻酔を使った方法もありますし、点滴による鎮痛剤投与、笑気ガス吸入、先に紹介したラマーズ法やソフロロジー式分娩も和痛分娩の一種とされることもあります。

文字通りとらえると無痛分娩は「痛みをなくす」、和痛分娩は「痛みを和らげる」。ですが、明確な定義や区別はなく、同じ分娩方法でも医療機関によって呼び方が異なることがあります。
呼び方にとらわれず、各医療機関で施されている処置と方針について、詳しく医師に確認してみましょう。

無痛分娩の流れ

無痛分娩の一般的な流れは以下のようなものです。

1.妊娠37週以降、健診で赤ちゃんの位置や子宮口の柔らかさや開き具合などを見て入院時期を決めます。

2.入院後は分娩監視装置や超音波などで赤ちゃんの心拍数や陣痛の状態をチェックし、必要であれば子宮口を広げる処置をします。破水した場合など、陣痛促進剤を使うこともあります。

3.チューブを腰に刺します。局所麻酔の注射を打ってから太い硬膜外針を刺し、麻酔を注入するためのチューブを通します。

4.出産の進み具合を確認し、必要に応じて陣痛促進剤で陣痛を誘発します。

5.痛みが強くなったら麻酔薬を注入します。麻酔薬は持続的に入れる方法もありますが、一度入れて効果が弱まったら再び注入する方法が主流です。麻酔の量や濃度、人によっても違いますが、たいてい1~2時間は効果が持続します。

6.子宮口全開大になったら、助産師のリードに従っていきみを開始します。

7.何回かいきんだらいよいよ赤ちゃんの誕生です。

異常分娩

異常分娩とは

正常な分娩から逸脱する場合を異常分娩といいます。「異常」と言われるとちょっとドキっとしてしまいますが、必要以上に不安に思うことはありません。それぞれに応じてしっかりと処置をしてもらえます。

具体的には、前期破水や微弱陣痛といった“難産”の原因になりやすい事態、吸引分娩や帝王切開という“分娩法の異常”、産道裂傷や子宮弛緩出血といった“分娩後の母体のトラブル”など、その内容は多岐に渡ります。

その中から代表的なものをいくつかご紹介します。

誘発分娩

予定日を何日も過ぎたり前期破水しているのに自然な陣痛が起きそうにないとき、計画分娩にするときなどに陣痛を誘発して行う出産で、代表的なものが陣痛促進薬によるものです。
陣痛誘発をする時点で子宮口が開いていないときは、ラミナリアという吸水性のあるスティック状の器具などで子宮口をある程度開いてから、陣痛促進薬を使うこともあります。

陣痛促進薬が効きすぎて陣痛が強くなりすぎると、子宮破裂や裂傷を引き起こす危険性があるため、分娩監視装置で陣痛の強さや赤ちゃんの心拍数を確認しながら量を調整して使います。

吸引分娩・鉗子分娩

吸引分娩とは吸引カップで、鉗子(かんし)分娩は金属製の2枚のへらを合わせた鉗子という器具で、それぞれ赤ちゃんを引き出す分娩方法です。

分娩中にお腹の中で赤ちゃんの状態が悪くなることもあり、その程度がひどい場合には急いで赤ちゃんを出す必要が出てきます。この場合、子宮口が全開で、赤ちゃんの頭が吸引できる位置まで下がっていれば吸引分娩か鉗子分娩、そうでなければ帝王切開が行われます。

鉗子分娩の方が吸引分娩より引き出す力が強く、早く赤ちゃんを出すことができますが、熟練したテクニックが必要なので実施する医療機関は少なくなってきているようです。

帝王切開

母体のお腹を切って赤ちゃんを取り出す分娩方法を「帝王切開分娩」といいます。出産する人の5人に1人がこの分娩方法です。
母体または胎児に何らかのトラブルがある場合に、安全を第一に考えて行われる手術で、赤ちゃんや母体にストレスをかけず、迅速に赤ちゃんを取り出す安全な手術です。

妊娠中から経腟分娩が難しいと判断され、あらかじめ手術日を決めて手術が行われるケースを予定帝王切開分娩、分娩前や分娩中に赤ちゃんや母体に何らかのトラブルが起こり、緊急に手術が行われるケースを緊急帝王切開分娩といいます。

多胎分娩

いわゆる双子ちゃんや三つ子ちゃんです。2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠することを「多胎妊娠」、2人以上の赤ちゃんを同時に出産することを「多胎分娩」といいます。

多胎妊娠の場合、可能であればNICU(新生児集中治療室)があるなど、いざというときに備えた設備や環境の整った医療機関で出産することが望ましいです。経膣分娩ができるかどうかは、赤ちゃんたちの子宮内での姿勢や大きさ、妊産婦の状態などによって判断されます。1人目が経腟分娩でも2人目で帝王切開分娩になる等、負担が大きくなる可能性も高いため、多胎出産は全て帝王切開分娩にする産院も多くあります。

分娩にかかる費用

平均的な金額は50万円前後

国民健康保険中央会のデータによると、平成26年度の正常分娩分の平均的な出産費用の平均値は約50万円で、内訳は
・入院料 約11万円
・室料差額 約1万5千円
・分娩料 約24万円
・新生児管理保育料 約5万円
・産科医療補償制度 約2万8千円
・検査・薬剤・処置・手当料・その他 約5万3千円
となっています。

後述する出産育児一時金42万円の直接支払制度を利用するか、帝王切開の場合に高額療養費の事前申請をするかなどで、退院時に必要な費用は変わってくるので、事前に確認しておきましょう。

分娩に伴いもらえるお金

出産育児一時金

出産育児一時金は、出産にあたって本人または夫の加入している社会保険や国民健康保険から一時金が下りる制度です。
支給額は、1児につき42万円(在胎週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度加算対象出産ではない場合は39万円)です。

勤務先や国民健康保険によっては、さらに上乗せして給付するところもあります。流産や死産になった場合も、妊娠85日以上であれば対象です。

病院への支払い後に本人が健康保険に請求する「本人受取」、医療機関が請求と受け取りを行う「直接支払制度」、出産前に本人が健康保険に請求して医療機関が受け取る「受取代理制度」という3つの受け取り方法があります。

医療機関の対応状況にもよりますが、手間も用意する現金も少なくするなら直接支払制度か受取代理制度、クレジットカードのポイントをためるなら本人受取等、事前に考えておきましょう。

出産手当金

正社員、契約社員、パート、派遣社員等で、仕事を辞めずに健康保険に加入し続けている場合、産前・産後休暇中(産前42日、産後56日)に給料が出ない場合、その間の生活を支えるために、健康保険から出産手当金が支給されます。

育児休業給付金

育児休業を取得したときは、一定の要件を満たした場合に、雇用保険から休業開始時賃金の40%相当額を育児休業給付として支給される制度があります。男女は問いません。

失業給付金

失業給付金とは、就職する意志があって求職中の人が、再就職が決まるまで安心して生活できるよう支払われるお金のこと。出産を機に退職する場合は失業給付金の手続きをしておきましょう。

妊娠中に失業給付を受けようと思っても、働くことができないとみなされて受けられませんので、通常1年間の受給期間を延長する手続きをしておきます。最長3年間まで延長可能です。離職日の翌日から30日を過ぎた日から1ヵ月以内に手続きが必要です。

医療保険の給付金

生命保険や医療保険に加入していれば、異常分娩の場合に入院給付金や手術給付金が支払われることもあります。帝王切開はもちろん、前期破水や微弱陣痛等の些細に思える異常でも給付されるケースもあるので、少しでも異常があった場合は産後落ち着いてからでもいいので保険担当者に相談してみましょう。

母子の健康に勝るものなし

分娩は「命がけ」とも言われるほどの大仕事。それだけに予期せぬことが起こることも多く、「何事もなくスムーズな経膣分娩」というのは意外と少ないものです。
思い通りの分娩にならないこともありますが、母子の健康に勝るものはありません。どんな分娩になろうとも、誇りを持って臨んでください!