無脳症の症状や原因とは?治療法や予防法についてもご紹介

無脳症はあまり知られていません。もしあなたが無脳症と診断されたら…、ご家族、友人が診断されたら…、そんな時、どうしたらよいのでしょうか?無脳症についてご説明します。

無脳症とは?症状は?

無脳症:脳が成長せず、頭蓋骨や頭頂部の皮膚も欠損状態


無脳症とは、脳や脊髄などの中枢神経のもと(神経管)が作られる妊娠の4~5週までにおこる神経管閉鎖障害のことです。

胎齢4ヵ月まではある程度の大脳の発達がありますが、5ヵ月ころからは一度形成された大脳が退化してしまい、脳が成長しません。
頭蓋骨や頭頂部の皮膚も欠損し、脳が露出してしまったり、眼球の欠損や突出、唇の奇形である口唇口蓋裂などが同時に見られることも多いです。

ある程度の脳の残存が見られるものを無頭蓋症(むとうがいしょう)といい、胎児や乳児にこの症状が現れた場合、無脳児ともいいます。



無脳症はいつわかる?

妊娠4ヵ月以降にエコーで診断される


診断は、妊娠4ヵ月以降の超音波検査で可能です。それ以前の検診でも、胎児の頭が丸くない場合は無脳症が疑われます。

エコーでの診断後、より詳細な検査が必要と判断されると、羊水か母親の血液を採取して染色体検査が行われる場合もあります。しかし、多くの場合はエコーでの診断の時点でほぼ無脳症が確定するようです。

エコー写真の特徴


超音波で異常のある胎児の頭部を見てみると、重度はさまざまですが、胎児の頭蓋が見えなかったり、形がいびつであったり、頭部の周りがゆらゆら動いているように見えるような感じがあります。 他に、正常な胎児より頭部の大きさがやや小ぶりであるともいわれています。

疑いのあるときは医師から説明がある


通常、妊娠初期の頃から胎児の頭蓋骨は形成されています。正常な頭部であれば、妊娠10週頃の早い段階から頭蓋骨のふちが確認できることが多いといわれています。

確定診断ができるといわれる妊娠4ヵ月以前であっても、無脳症の疑いがあるときは医師からその旨を告げられることがあります。まだ胎児が小さなうちは判断が難しい場合もあるため、その後の経過を見ながら判断していくということもあります。見た目に異常があるときは検診のたびに医師から説明があると思いますので、落ち着いて聞くようにして下さい。

無脳症の赤ちゃんを妊娠するとどうなる?

羊水過多になる可能性がある


無脳症をはじめ、胎児側の異常が羊水過多の原因になることがあるとされています。原因になりうる異常としては、無脳症のような中枢神経の異常、ダウン症のような染色体異常、消化器官の異常などが挙げられます。羊水過多症が健康な胎児に悪影響を及ぼすわけではなく、このような胎児の異常は防ぎようのない自然発生のものがほとんどといわれています。

無脳症胎児を妊娠した場合、妊娠後期に羊水過多症になることがあります。羊水は胎児にとって必要なものですが、多すぎると母体への負担が多くなります。お腹は必要以上に大きくなり、圧迫感や呼吸困難のほか、血圧の上昇も起こるといわれています。妊娠後期の羊水過多症は早産の原因にもなるので、母体への負担を考え、人工的に出産を誘発する措置が行われます。

出産時のリスクが高くなる


無脳症の赤ちゃんは頭蓋骨の形成が不完全で頭の上の部分が開いた状態になっているといいます。そのため出産時に開いた頭蓋骨で産道を傷つけてしまう恐れがあり、胎児が大きくなってからの出産は危険だともいわれています。

また、普通の赤ちゃんに比べて頭が小さいため、産道を押し広げる力が弱く分娩に時間がかかってしまったり、最悪の場合は途中で引っかかって出てこられなくなる可能性もあるとされています。自然分娩が不可能な場合は帝王切開が必要になるため、母体への負担も増大します。



無脳症の赤ちゃんの寿命は?

残念ながら、生まれてすぐに亡くなることが多い


無脳症の赤ちゃんはお腹の中では母体からの酸素や栄養により出産まで生きていられます。しかし、生命維持に必要な機能を持っていないことも多く、自力で生きていくことは難しい場合がほとんどです。出産まで至ったとしても多くの赤ちゃんが出生後すぐに亡くなってしまうといわれています。

無脳症はその致死率の高さや出産のリスクから、人工妊娠中絶が選択されるケースが多いとされています。もし出産することを選択したとしても約75%が死産の可能性があり、残り約25%も産後1週間以内にほとんどの赤ちゃんが亡くなってしまうといわれています。
とはいえ、実際に数年生き延びた赤ちゃんも何人もいます。そのために人工的に流産する判断が正しいかどうか、とても難しいところです。

無脳症の確率


日本における確率は、10,000人に5~10人といわれています。アメリカですと1000人に1人のため、かなりの地域差があります。

無脳症の原因

日本ではどう考えられているの?

原因とされるものはさまざま

明確な原因はまだ解明されていませんが、日本では以下の点が関係すると考えられています。

・母体の先天性の疾患
・飲酒
・喫煙(受動喫煙)
・高齢出産
・遺伝子的要因

無脳症への治療法や予防法は?

有効な治療法はない

無脳症に対する有効な治療法は、残念ながら発見されていません。
無脳症の発症リスクを低減させるといわれているのは、葉酸の摂取です。厚生労働省が勧告しています。

いつから葉酸をどれくらい摂ればいいの?

妊娠を希望している1ヶ月前から妊娠後3ヶ月に、医師の管理下の元1日につきサプリメントなどで0.4mg摂るのが理想です。(通常は0.1mgです)それにより無脳症や二分脊椎症などの、先天性異常になるリスクを軽減するとされています。

葉酸は、水に溶けやすく熱に弱いという性質がありますので、サプリメントを利用するようにすると、一日に必要な量を摂取することができます。

ですが、無脳症の原因が葉酸の不足だけではないため、十分摂取していても、絶対に無脳症にならないというわけではありません。

神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供について
※こちらを参考にしました

無脳症と診断されたら…

中絶を選択することが多い

胎児は、生命維持に必要な脳幹が欠損していることも多く、多くの場合は死産になり、生きて生まれたとしても一週間以内に亡くなることがほとんどです。
まれに1年以上生存することもありますが、生まれた瞬間から肺で呼吸しなければならず、集中治療が欠かせない状態のままとなります。

その死産率の高さから、多くの妊婦が人工妊娠中絶を、妊娠11週目(妊娠3ヶ月)までに選択されることが多いようです。
一般的に、医者から中絶を勧められることはほとんどありませんが、無脳症の場合だけは唯一中絶を勧める病気です。それほど重大な病状だからです。

人工中絶について


授かることのできた奇跡のいのちを中絶することは、非常に苦しく辛い選択になります。

しかし、どのママも「授かったから出産する」ということができない場合があります。中絶の決断をしたとき、それは本当に簡単に言い表せないほどの一生の決断となるはずです。

それだけに、人工中絶についてよく知っておくことは大変重要なことかと思います。

日本では、「胎児が母体外において、生命を保続することができない場合に、人工的に胎児およびその付属物を母体外に排出すること」を人工妊娠中絶と定義づけしています。堕胎ともいわれます。

初期中絶の時期は妊娠11週~12週未満、中期中絶は12週~22週未満と決められていますが、無脳症の赤ちゃんを授かった場合はこの初期中絶の時期になってきます。

小水無脳症で産まれたジャクソン君

ジャクソン君は奇跡の赤ちゃん


ここで無脳症の赤ちゃんとして非常に名の知られている、奇跡の赤ちゃんのジャクソン君をご紹介したいと思います。

ジャクソン君は2014年にアメリカ・フロリダにて、ブランドンさんとブリタニーさん夫妻のもとに生まれました。頭蓋骨がほぼすべて欠損している小水無脳症という状態でした。奇跡的に1歳の誕生日を迎えたときには全米でたいへん有名になったそうです。そのジャクソン君の生命力の強さから「ジャクソン・ストロング」というあだ名が付けられました。

以降、ご両親はフェイスブックにてジャクソン君の成長を継続的に投稿して、とてもたくさんの反響を受けています。

両親は「産む」ことを選択


アメリカでは、年間1000人に1人の割合で無脳症の発症があるそうです。産まれてきて生き延びたとしても、発達障がいや知的障がいを避けることができないこともあり、医師には中絶をすすめられたそうです。それでもジャクソン君のご両親は産むことを選択し、現在でも愛情たっぷりで育てています。

1歳を迎えて全米で話題となったあと、ニュースを見た人からは「残酷ではないか」といった批判も多かったようです。しかし、ご両親はジャクソン君を授かったことが奇跡で精一杯育ててあげたい、と決意して産むことを選択しました。

現在でも一部の人から心ない言葉を受けるということですが、現在ジャクソン君は2歳を迎え、今でもなおご両親の愛情に包まれて育っています。本当に奇跡ですね。

無脳症児は、臓器移植のドナーになることも


無脳症児は、そもそも大脳が無いことで、その胎児を脳死と判定するかどうかという問題があります。

「染色体異常、先天奇形が他の臓器にも多いこと」
「出生直後では臓器の発達が遅れていること」

上記のような医科学理由から、ドナー候補者とは考慮しない移植医も多いですが、欧米では無脳児からの臓器摘出を推進している団体もあります。
その場合ドナーになりやすいのは、「他の臓器に奇形が無く、出生後も臓器の発達を促しやすく生存能力の高い、より『正常な』無脳児」となります。
また、必然的に脳の欠損が少ない患児が潜在的臓器提供候補者(ポテンシャルドナー)とされます。

わが子が無脳症とわかったとしても


この世には、人間の力ではどうにもできない運命もあると思います。
もし無脳症の赤ちゃんを身ごもって、どんな決断をし、どんな結果になったとしても、どうかご自身を責めないでください。