正しく知りたい出生前診断。その方法とメリット・デメリット

おなかの赤ちゃんの染色体異常を調べる「出生前診断」。ママの体にも金銭面でも負担のかかる検査ですが、年々受ける人が増えてきています。大切な赤ちゃんの障がいは知るべきか、知らずにいるべきか…?物議を醸しだしている出生前診断ですが、誤解がないよう正しい知識は身に着けておきましょう。決断するのはそれからでも遅くありませんよ。

出生前診断とは?

胎児の奇形や先天性の病気などがわかる

出生前診断とは、妊娠9週~22週頃に行う胎児の検査です。おなかの赤ちゃんに奇形や先天性の病気、染色体異常がないかを調べることができます。
検査方法は、体に負担のない「超音波検査」から、おなかに針を刺して子宮内の絨毛や羊水細胞などを採取して調べる「絨毛検査」「羊水検査」などまで、さまざまなタイプがあります。
知りたい項目や予算によって検査方法が違ってきますので、自分がどれを受けるのかは医師とよく相談するようにしましょう。



出生前診断にはどんな検査方法がある?

主に5種類の検査があります

一口に出生前診断と言ってもさまざまなタイプがあります。
検査を受ける時期、検査にかかる金額、検査によってわかる項目、リスクの有無など、それぞれの検査によって異なりますので、よく調べてから検査を受けるようにしてください。

出生前診断の種類は、大きく分けて以下の5種類です。

・超音波検査
・血清マーカーテスト
・羊水検査
・絨毛検査
・新型出生前診断

では、ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。

1.超音波検査―胎児の外形から診断するため不確定要素も―

検査方法:経腹もしくは経腟プローブで画像を確認

超音波検査と言っても、出生前検診の検査は一般的な妊婦健診で行われているものとは異なり、かなり精密な映像を見ることが可能です。
ですので「超音波スクリーニング検査」と呼ばれて、妊婦健診の超音波検査とは区別されています。

超音波スクリーニング検査は妊娠期間中いつでも検査可能なのですが、出生前診断として一番検査件数が多いのが妊娠12週あたりの初期の頃です。
ダウン症などの染色体異常や重症の心奇形がある場合の胎児は、妊娠12週前後あたりにうなじのむくみ(NT)が厚くなったり、鼻骨が欠損しているという特徴がみられます。
ですので妊娠初期にはだいたい妊娠12週前後で超音波スクリーニング検査を行い、おなかの赤ちゃんのうなじや鼻骨に異常がないかを判断します。

妊娠中期になると、赤ちゃんの外見がかなり人間らしくなってきますので、口蓋や眼球、手足の指など、細かい部分まで検査が出来るようになります。
さらに後期になると、胎児の心臓疾患や脳の発達状況までも検査可能です。

費用:2万~5万程度

超音波検査は出生前診断の中ではかなり安い部類で、一回2~5万円程度で受けることが出来ます。
金額は病院によってかなり異なりますので、病院へ問い合わせてみましょう。

メリット:妊婦さんの負担が少なく、費用も安い

子宮の外からの撮影になるので、痛みもなくママの体に負担がかからないのが嬉しいですね。
病院によっても違いますが、妊娠初期では経腟超音波検査になることが多いようです。

デメリット:角度によっては見えない場合も

おなかの外からの撮影になるので、赤ちゃんの角度や見え方によっては確実な結果が出ないという難点があります。
まず出生前検診の手始めとして超音波検査を受け、疑わしい場合には次の検査を受ける、という場合が多いようです。



2.血清マーカーテスト―採血だけという手軽さで、染色体異常の確率を算出―

検査方法:少量の採血のみ

血清マーカーテストとは、妊娠16週~18週の妊婦さんから少しだけ採血をし、その血中成分から「おなかの赤ちゃんの染色体に異常がある確率」を算出する検査です。
妊婦さんの血液の成分濃度から、おなかの赤ちゃんのダウン症候群や18トリソミー、開放性神経管奇形の確立を調べることができます。

ただあくまでこれは「異常がある確率」を計算する検査であり、本当に異常があるかどうかはわかりません。
検査結果で異常の疑いがある場合は、羊水検査を受けるように勧められることもあります。

費用:病院によっては1万円程度のことも

妊婦さんの採血だけなので、それほど高額にはなりません。
費用は1万円~3万円程度で収まることが多いようです。

メリット:採血するだけという手軽さ

なんといっても、妊婦さんから採血するだけという手軽さが魅力です。
検査を受けても流産の心配がないのが嬉しいですね。
また、それほど費用がかからないのもメリットと言えそうです。

デメリット:確率のみしかわからない不確定性と、高齢の方だと正しい値が出ないこと

血清マーカーテストは手軽ですが、確定判断ではなく「異常がある確率」出すだけの検査です。
検査結果で高い数値が出たとしても、確実に異常があるとは限りません。
また、結果で異常の疑いがあった場合は、羊水検査を勧められることが多いので、二度手間になるという難点もあります。

また、血清マーカーテストは同年代の妊婦さんと比べどれだけリスクが高いかという判断をするので、もともと染色体異常の率が高い高齢妊娠の方だと、あまり正確な値が出ないことがあります。
40歳以上の妊婦さんにはさほど効果のないことがありますので、受ける際には医師と相談しましょう。

3.羊水検査―出生前検査の最後の砦、リスクはあるけど確実度は高い―

検査方法:針を刺して羊水を採取

羊水検査の行われる時期は、妊娠15週から18週あたりです。
子宮内に針を刺して妊婦さんの羊水を採取し、羊水中に含まれる赤ちゃんの細胞を調べることで、染色体異常の有無がわかるというわけです。

針を刺している時間は20秒ほどですし、検査前に超音波で赤ちゃんの位置や状態を確認してから行われますので、赤ちゃんに針が刺さる心配はありません。
ですが、子宮内に針を刺す刺激で子宮収縮が誘発されたり、感染症にかかる場合もあります。わずかですが流産を引き起こす可能性もあるので、検査は慎重に判断するようにしましょう。

この検査では、赤ちゃんの染色体の数や構造の異常を調べることができます。
13トリソミーや18トリソミー、あとダウン症候群(21トリソミー)など染色体の奇形なら、非常に細かい異常以外はほぼ正確に診断することが可能という確実性の高い検査です。
とはいえ外形の異常や代謝異常などは羊水検査では調べることができませんので、そちらを調べたいなら超音波検査を受けるようにしましょう。

費用:10万~20万程度

検査料はすべて自己負担になります。
検査をする病院にもよりますが、だいたい10万円~20万円ほどになることが多いようです。

メリット:ほぼ確定した診断が受けられる

羊水検査は、赤ちゃんの細胞を直接採取することが出来ますから、ある程度確実な診断を出すことが出来ます。
超音波検査や血清マーカーテストで信頼できる結果が出なかった場合や、もっと確実な結果が知りたい場合に使われるため、「出生前検診の最後の砦」と言えそうですね。

デメリット:わずかながら流産の危険性がある

羊水検査でおなかに羊水採取用の針を刺した後、0.1~0.3%程度の確率で流産する可能性があります。これは針を刺した刺激で子宮が収縮したり、感染症にかかってしまうのが原因です。
また、リスクを冒してせっかく採取した羊水細胞も、赤ちゃんのものではなくママの細胞が混ざっているなどで、正しい検査結果が出ない場合もあります。
採取後の細胞がうまく培養できずに、再検査になる妊婦さんも少なくありません。

▽こちらのサイトを参考にさせていただきました

羊水検査 – 兵庫医科大学病院 出生前診断

4.絨毛検査―高リスクだが早期検査が可能というメリットも―

検査方法:針や管を指して絨毛を採取

胎盤のもととなる「絨毛」の組織を採取して、赤ちゃんの細胞を調べるのが絨毛検査です。
妊娠10週前後に行われることが多いようですが、胎盤の位置がはっきりしない場合には受けられずまた日を改めるので、検査が14週くらいまで遅くなる方もいるようです。

この検査では羊水検査と同じく、赤ちゃんの染色体異常を調べることができます。
13トリソミー、18トリソミー、ダウン症候群などを早期に発見するためには有効な検査になります。
ただ、同じような検査が出来る羊水検査に比べて、流産のリスクがかなり高くなるのが絨毛検査の難しいところ。あまりお勧めされない場合も多いようです。

お腹に直接針を刺す場合と、膣から管を入れる場合がありますが、リスクとしてはどちらもたいして変わりません。

費用:10万~20万程度

羊水検査と同じく保険はきかず自己負担なので、10万から20万円くらいかかります。

メリット:早期に確度の高い検査が可能

羊水検査と同じような検査なのに、なぜリスクの高い絨毛検査があるの?と疑問に思う方もいますよね。
「絨毛検査」と「羊水検査」、この大きな違いは「検査の時期」なのです。
絨毛検査が妊娠10週前後という妊娠初期の段階で受けられるのに対し、羊水検査は羊水がある程度たまる妊娠15週以降でないと受けることが出来ません。
絨毛検査は羊水検査よりも数週間早く検査を受けることが出来るので、早期に結果を知りたい方にはとても有効な検査なのです。

デメリット:流産の危険性が高い

絨毛検査は、子宮内にある絨毛組織を採る検査ですから、当然子宮や胎盤にも刺激があります。
検査後に羊水の流出や、おなかの張り、出血などがあることもあるので、検査は慎重に行いましょう。
流産の確率は羊水検査の10倍ともいわれているほどリスクの高い検査なので、本当に必要な場合のみしか推奨されていません。

また、検査後もしばらくは病院内で安静を求められます。
検査を受ける日は、時間的に余裕をもっておいた方が良さそうですね。

5.新型出生前診断―対象者限定、母体に負担のない画期的な検査―

検査方法:少量の採血のみ

この新型出生前診断は、2013年春から始まった新しい出生前診断法です。
現状では、過去に染色体異常の出産経歴があるなどのハイリスクの妊婦さんが検査を希望する場合に実施されるもので、全ての妊婦さんが出来る検査ではありません。

検査方法は簡単で、血清マーカーテストのように妊婦さんの血液を約20cc採るだけで済みます。
少量の血液を採るだけで、おなかの赤ちゃんの染色体異常の有無がわかるのですから、画期的ですよね。

ですが、残念ながら新出生前診断ではすべての先天性異常を検査できるわけではありません。
新型出生前診断は、13トリソミー、18トリソミー、それにダウン症群という3種類の先天性異常は高い確率で診断することが出来るのですが、それ以外の先天性異常に関してはノータッチです。
3種類の異常が診断できると言っても、100%確実な診断になるわけではなく、外れる可能性もあることは理解しておきましょう。

費用:20万程度

保険適用になりませんので、約20万程度はかかります。
結果によってはこの後確定診断として羊水検査を受けなくてはいけない場合もありますので、その時はその分の費用も発生します。

メリット:妊婦さんの負担が少ない

子宮に針を刺して流産になるリスクがない安全な検査です。
妊婦さんにとっての負担が少ないのが嬉しいですね。

デメリット:一部の異常しか探せない上に、検査対象者が限定される

新出生前診断では、主な先天性異常の13トリロジー、18トリロジー、ダウン症群に関しては高い確率でわかりますが、それ以外に関しては羊水検査を受けなくてはわかりません。
新型出生前検診の結果次第では、羊水検査を受けなくてはいけない場合もあり、時間的にも費用的にも二度手間になることも…。
また先天性異常の3種類に関しても、確実な診断ではないため外れる可能性もあります。

また、この検査は万人が受けられるものではないのも難点の一つです。
超音波検査などで疑わしい点が見つかった場合や、妊婦さんが高齢であるなどの理由で産科医が「検査を受けたほうがいい」と推奨する場合しか受けられません。
また条件がそろったとしても、全国的に見ても実施している病院がまだ少ないため、近場では受けられないこともあります。

出生前診断の抱える問題点

すべての異常を検査できるわけではない

出生前診断でわかる先天性の異常は、染色体や外形で見えるもののみです。
それは数多くの先天性異常の中の、ほんの一部に過ぎません。

先天性疾患は他にも、心臓や脳、神経系統、視覚や聴覚の異常、また遺伝子の異常など、出生前診断では調べきれないものが多数存在しています。
出生前診断で異常が見つからなかったと言って、産まれてくる赤ちゃんが100%正常という保証はありません。
数多い障がいの可能性のごく一部がわかるかわからないか。それが出生前診断なのです。

命の選別につながる可能性がある

「おなかの赤ちゃんに障がいがあるから中絶します」
出生前検査の結果、そういって中絶を選ぶ人が毎年数%はいるという統計がありました。
確かに障がいがある子どもを育てるのは、健常な子どもの子育てより数倍手がかかることでしょう。
シングルマザー、若年出産、経済的に苦しいなど、様々な事情で子育てに余裕を持てない方々にとっては、子どもの障がいの有無は無視できない大きな壁になっています。

ですが、この出生前検査によって「障がい者を排除する」というのは、命の選別につながるのではないかと危惧されています。
「障がいが無いなら産む」「障害があるなら産まない」と、親が赤ちゃんの生を選べることは、倫理的にも問題をはらんでいる可能性があるようです。

安易な人工中絶が増える可能性

年々検査を受ける人が増加している出生前診断。
中には「おなかの赤ちゃんに障がいがある可能性」を突きつけられて、ショックを受ける方もいるのではないでしょうか。

どんな親でも「健康な赤ちゃんを産みたい」というのは共通の願いです。
裏を返せば、「障害のある赤ちゃんは欲しくない」と思う気持ちもよくわかります。

「生まれる前に胎児の障がいを知って早めに対処しよう」という当初の目的からずれてきて、出生前診断が「中絶をするかどうか」の判断材料になりつつある昨今。
出生前診断の結果次第で、安易に人工中絶を選ぶ人が増えてしまう…。それが出生前診断の心配な点の一つです。

正しい知識をもって診断結果を受け止めて

何度も述べました通り、出生前診断は確定診断ではありません。
検査結果が陽性でも障がいがない赤ちゃんが産まれるかもしれませんし、結果が陰性でも障がいがあるかもしれません。
ですから、診断結果はあくまで「参考程度」に受け止めるようにしましょう。

正しい知識を持って診断を受けるなら、なにも後ろめたいことはありません。
赤ちゃんの未来のため、そしてママの心構えのため。
あなたが必要と感じたならば、出生前診断を受ける価値はあると思います。
赤ちゃんへの愛情と、あなたの豊かな未来を心にとめながら、あくまでテストの一つとして診断を受けるようにしてくださいね。