漢方薬という言葉は、ご存じの方も多いでしょう。でも漢方薬にはどんな薬があって、どういう症状に効果があるのか、ということを知っている人は少ないのではないでしょうか?国内の製薬会社から販売されている漢方薬は、約160種類と言われています。その中で、小さいお子さんをお持ちのママに「甘麦大棗湯」をご紹介します。
甘麦大棗湯とは?
主に、夜泣きやひきつけに使われる漢方薬です
甘麦大棗湯は一般的には、子どもの夜泣きやひきつけに使われる漢方薬です。そして、女性にもよく使用されます。比較的体力が低下した人の不安や不眠などの症状の改善、また不安発作やパニック発作にも使われます。
甘麦大棗湯にある筋弛緩作用と鎮静作用が、症状を改善することが期待されるのです。発作的な症状として不安が高まることがあるときや、神経過敏になって眠れないときに、頓服として使われる場合もあります。
含まれる成分は「大棗」「小麦」「甘草」の3つ
含まれている成分は、3つあります。大棗(タイソウ)小麦(ショウバク)甘草(カンソウ)です。
実はこれらは、毎日の暮らしに大変馴染みのあるものです。甘草は醤油などの甘味料であり、大棗とはお菓子にも使われるナツメのことです。そして一番馴染み深い小麦は、パンの原材料です。
日常生活の身近にあるものですよね。これら3つが組み合わさることによって、夜泣きやひきつけに効果が期待できるというのですから、ママには嬉しいことではないでしょうか。
甘麦大棗湯の効能
緊張を和らげ気持ちを鎮める
漢方薬は、自然界にある天然の生薬から作られています。しかし天然のものといっても、それぞれに作用が認められてます。甘麦大棗湯に含まれる3種類の成分は、それぞれにその効果を発揮し、さらに組み合わさることによって互いに効果を増強させます。
まず甘草には筋弛緩作用があるため、筋肉の緊張を和らげます。そして小麦と大棗には、体を冷やして興奮を鎮めるという鎮静作用が期待できます。さらに、甘草と大棗という2つの成分は相性が良いため、胃腸の働きを促進させてくれるという利点まで生まれるのです。
嬉しい!効き目が早く実感できる
甘麦大棗湯には、他の漢方薬と比較すると甘草が多く含まれています。甘草の効果は、比較的早く現れます。
夜泣きやひきつけが治まらない、イライラや不安、緊張が続くというのは大変つらい状況です。もちろん効果の現れにくい方もおられるようですが、逆に体に合う人には服用直後から効果がみられる人もいるようです。特に、体の緊張の強い人に効果がでやすいようです。
なるべく漢方薬だけで治療をしたいと願う方だけでなく、抗不安薬を服用することが適切でない方に対して甘麦大棗湯は、切迫した症状を改善することも期待できます。
甘麦大棗湯の飲み方
空腹時の服用が効果的
漢方薬は原則として、1日2~3回に分けて食前や食間に服用します。もし食前の服用を忘れたら、食後2時間の空腹時がおすすめです。お腹に何もない状態のほうが腸に早く到達するため、吸収がよくなるのです。
甘麦大棗湯は、ツムラ・コタロー・オオスギという3つの製薬会社から発売されています。生薬成分の含まれる量は同じですが、会社によって漢方薬の1日に服用する量が異なります。ツムラは7.5g、コタロー・オオスギは9.0gになっています。
また服用する量は、年齢や体重、症状によって増減されます。
子どもにはぬるま湯に溶かせると飲みやすい
漢方薬には、「苦い」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。服用するのが特に子どもの場合は、心配するママも多いかもしれません。
しかし甘麦大棗湯は、比較的甘いお薬です。小さい子どもにも、飲みやすいのではないでしょうか。
それでも、粉薬は飲みにくいものです。まずは、粉になっている薬を清潔にしたスプーンなどでつぶしましょう。そして、ぬるま湯にしっかりと溶かせましょう。
赤ちゃんの場合は、素早く口内になすりつけるという方法がよいのではないでしょうか。母乳やお茶などを与える前の空腹時や、喉がかわいている時が服用させるねらい目です。
また離乳食など食べられる時期なら、市販されているオブラートやお薬服用用のゼリーなどを利用する方法もいいでしょう。何かと混ぜて服用する場合には、冷やしたり味の濃いもののほうが味覚を感じにくいということもあります。
授乳中、妊娠中でも飲んで良い?赤ちゃんへの影響は?
妊娠中や授乳中の安全性は確立されていない。服用前に必ず医師に相談を
甘麦大棗湯は、女性がよく服用する漢方薬でもあります。神経症、不眠症、うつ状態、更年期障害、自律神経失調症などから起こる、心身の興奮状態に処方されるのです。
しかし、妊娠中や授乳中の安全性は確立していません。赤ちゃんへの影響がない、とは言い切れないのです。「服用の必要性が副作用によるリスクを上回った場合にのみ服用を推奨する」という記載が、商品説明にも添付されています。
服用を考える場合は、専門医を受診して相談することをお勧めします。
甘麦大棗湯の副作用はある?
鼻炎や咳、下痢などの症状がある場合も
漢方薬には副作用がない、という認識はないでしょうか。そんなことはありません。生薬からできているといっても、食べ物からアレルギー反応がでる場合もあるのです。注意が必要です。
特に甘麦大棗湯の場合、成分に小麦が含まれています。小麦アレルギーの人は服用を避けてください。
他にも鼻炎や咳といった上気道の症状、薬疹や口内炎といった皮膚的な症状、また下痢などの消化器系の症状などが見られることもあります。服用し始めてこれらのアレルギー症状が出たら、ただちに中止して受診してください。
他にもある副作用
甘麦大棗湯に含まれる甘草は、大量に摂取すると生薬としての副作用がおこることがあります。高血圧やむくみ、低カリウム血症などが現れる「偽アルドステロン症」には注意しましょう。低カリウム血症を発症すると、筋肉のけいれんや麻痺をおこすことがあります。
服用後いつもと違う症状が現れたら、医療機関にご相談ください。
甘麦大棗湯の値段
薬局で購入する場合、42包入りで3000円前後が目安
【第2類医薬品】甘麦大棗湯 エキス細粒6 2.0g×30包
(2016/07/17 17:51時点) 甘麦大棗湯は、薬局やドラッグストアでも販売されています。そのお値段は、ツムラが発売しているものは1包2.5g入り×42包の包装が3500円くらい、コタロー発売では1包3g入り×42包の包装が2800円でくらいです。
処方箋で出される薬の値段は、ツムラでの薬の販売価格は1g7.7円、コタローでは1g6.7円です。医療機関を受診し、薬局で調剤してもらうと、薬代以外にもかかってくる金額があり、また手間や時間もかかります。
しかし、困っている症状を改善するためには、何が一番適切な薬なのか、その判断は専門医の指示を仰ぐのが一番です。
受診時には症状を記録して持参しよう
漢方薬を処方してくれる病院もあります。まずは受診する前に、漢方薬を処方してもらえるか、電話で問い合わせするのがいいでしょう。
漢方薬は、体の状態や体質をあらわす「証(適応証)」の一致が重要なカギです。そして証には色々な考え方があり、その奥はとても深いものです。体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。
漢方専門医を受診する場合には、いつ、どのようなとき、どのような不具合がどの程度というようなメモを持参されることをお勧めします。
笑顔のカギは、生活の見直しから
子どもの夜泣きは、経験したママにとっては想像以上に精神的にも肉体的にもしんどいものです。いつ終わりがくるかわからないという不安と、何か病気ではないかという心配から、身も心も疲れ果ててしまいます。またひきつけを起こすわが子を目の前でみると、自身がパニックになってしまう人もいるのではないでしょうか。
どの病気も辛く、しんどいものです。薬を服用する前に、もう一度生活習慣について見直しましょう。バランスのとれた規則正しい食事がとれているか、適度な運動をしているか、などについて振りかえってみましょう。
工夫をこらしても症状に改善のない場合には、適切な薬を服用して、心から笑顔になれる暮らしを取り戻しましょう。