不妊には様々な原因があり、原因に応じて治療を進めることになるのですが、まずは原因を特定するために不妊症検査を受けます。「検査ってどんなことをやるの?」「怖い?」「痛いの?」など、様々な不安・疑問を解決するため、検査についてご紹介します。不妊症検査は妊娠のための第一歩ですので、少しでも前に進むきっかけになりますように!
不妊症とは
「妊娠を望んで2年経っても妊娠できない」というのがこれまで不妊症の定義でしたが、近々この定義が「2年」から「1年」に短縮されるそうです。妊娠を希望して避妊をせず性交渉をしているが、なかなか妊娠できない不妊で悩んでいる夫婦は今や10組に1組に上ります。不妊の原因は多岐にわたり、原因を探るための検査も様々なものがあります。
不妊の原因には何があるの?①女性側の不妊の原因とその検査
不妊の原因には、女性側にトラブルがある場合、男性側にトラブルがある場合がありますが、まずはその主な原因を妊娠までのプロセスごとにご説明します。またその原因を特定するための検査もお伝えしています。
排卵トラブルによるもの
・排卵していない場合(卵胞が育たず排卵しない or 卵胞が育っても排卵できない)
→基礎体温、血液中のホルモン検査で確認します
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
→血液中のホルモン検査や卵巣の超音波検査で確認します
・高プロラクチン血症(授乳のためのホルモンがたくさん分泌されて排卵を抑制している)
→血液中のホルモン検査で確認します
卵管トラブルによるもの
・卵管の癒着や閉塞がある場合(卵管が詰まって通りが悪いと、卵子と精子が出会えないため)
→子宮卵管造影検査で確認します
・クラミジア感染症(卵管の癒着・閉塞の原因となる感染症のこと)
→採血で過去に感染したか調べる検査と、子宮頚部を綿棒でぬぐい今感染しているか調べる検査があります
着床トラブルによるもの
・子宮筋腫(子宮にできる良性の腫瘍。場所や大きさによっては着床を妨げる)
→内診、超音波検査、画像解析(CT/MRI)で確認
・子宮内膜ポリープ(受精卵が着床する場所にイボができて、着床を邪魔している場合)
→超音波検査、子宮鏡検査、子宮卵管造影検査で確認します
・子宮内腔癒着(内膜が炎症を起こし、内膜の組織同士が癒着。アッシャーマン症候群とも呼ばれます)
→子宮鏡検査、子宮卵管造影検査で確認します
・子宮奇形(子宮上部がハート型にくびれた双角子宮や、中に仕切りのある中隔子宮などがあります)
→超音波検査、子宮鏡検査、子宮卵管造影検査で確認します
その他
・頸管粘液(おりもの)の量が少ない、頸管粘液との相性が悪いなどの場合
→頸管粘液検査、抗精子抗体を調べる血液検査、フーナーテストで確認します
不妊の原因には何があるの?②男性側の不妊の原因とその検査
・射精がうまくいかない
・精液中の精子の数、運動率が悪い場合
→精液検査、フーナーテストで確認します
女性が受ける不妊検査
実際、不妊治療検査を受けるときは、「これとこれだけ受ける」ではなくて、一連の検査を網羅的に受けます。病院で検査項目や生理周期に沿ったスケジュールが決まっていて順番に受けていきます。
ここからは、それぞれの検査について見ていきましょう。
1、超音波検査:子宮や卵巣の状態を確認します
子宮や卵巣の状態を確認するために内診台で診察を受けます。ショーツを脱いで内診台に座ると内診台が動き、仰向け気味の体勢で両足は左右に開きます。そこで、お医者さんが膣から超音波プローブ(直径約1.5~2cm)を挿入します。
通常痛みはありませんが、緊張して力が入ると痛いと感じるかもしれません。また、両足もできるだけ力を抜いて左右にパタンと倒す方が診察が進みやすいです。息を意識的にスーっと吐きながら力が入ってしまうなら脚ではなく手をグーにするのがおすすめです。
抵抗があると思いますが、めでたく妊娠したら妊婦健診でも同様の内診があります!練習だと思って頑張って!
2、ホルモン検査:血液検査でどのホルモンの乱れがあるか調べます
血液検査は、卵巣の働きをチェックしたり不妊の原因がどのホルモンの乱れによるものかを調べます。尿検査ではLHというホルモンの量を調べて排卵時期を予想します。
ホルモンによって検査するのに適切な時期(生理周期)が異なります。
3、子宮卵管造影検査:子宮の形や卵巣が詰まっていないか調べます
子宮の入り口から造影剤を注入しレントゲンを撮ります。子宮の形や卵管が詰まったり癒着していないかが分かります。
子宮がきゅーっとなり生理痛のように感じる人もいます。事前に市販の鎮痛剤を飲んでおくと痛みが和らげられますが、飲んでいいかは病院に確認してください。
月経終了から排卵までの間に検査をし、検査までは避妊しておく必要があります。この検査により卵管の詰まりが取れることから、検査後半年は妊娠しやすいとも言われています。
4、子宮鏡検査:子宮にカメラを挿入して観察します
膣から子宮に細いカメラを挿入して子宮内を直接観察します。超音波検査より少し痛みというか違和感があると思います。力が入らないように深呼吸して臨みましょう。
5、頸管粘液検査:粘液の状態から排卵の時期や卵巣の機能を確認します
子宮口から粘液を採取します。量、色、粘性などから排卵の時期が予測でき、また卵巣の機能をチェックします。
6、抗精子抗体検査:受精を邪魔する抗体がないか調べます
採血によって女性の体内に精子と結合して精子の運動量を下げたり受精を邪魔する抗体がないか調べます。
7、子宮内膜組織検査:子宮内膜の状態を調べます
子宮の内膜組織を採取し顕微鏡で見て、内膜の状態を調べます。高温期7日から10日頃に行います。
8、フーナーテスト:性交渉の翌日に、子宮内の精子を調べます
男性が3~4日の禁欲し排卵期に性交渉をして女性が病院へ行き(例えば前の晩に性交渉して、翌朝来院)、子宮内、頸管粘液内、膣内にどのくらい元気な精子がいるかを調べます。
男性が受ける不妊検査
精液検査:精液の数や状態を確認します
4~5日の禁欲後、マスターベーションによって病院からもらってきた容器の中に精液を採取し、その容器を3時間以内に病院に提出します。病院によっては精液を採取するための部屋が設けられているところもあります。この他、フーナーテストも男性が性交渉という形で参加しますが、検査を受けに行くのは女性なので、上記の「女性が受ける検査」(8)に記載しました。
不妊の原因がわからない場合もあります
必ずしもここに挙げた原因に誰もが当てはまるわけではなく、一般不妊検査には含まれていない腹腔鏡検査で更なる原因の究明をしても、結局異常がない夫婦もいます。ですが、原因不明でも妊娠する人はたくさんいますし、お医者さんも最善の治療を進めてくれます。
一連の不妊症検査にかかる期間と費用
生理周期に沿って順調に行えば、1ヵ月で終わります。料金は病院によりますが、総額で安くて1万円、平均2万円前後、高いと5万円以上かかる場合があります。
不妊症の検査を行う際に気をつけたいこと
あれこれ考える前にまず病院の予約だけでも先に!
迷っている間にどんどん時間が過ぎてしまいます。不妊治療で人気の病院だと、初診は予約がないと受けられなかったり、しかも3か月待ちだったり、思わぬ時間的ロスが出ます。不安な気持ちもあると思いますが、まず予約してみることをお勧めします。
夫婦で話し合う機会を設ける
不妊治療は夫婦二人で進めるものです。早い段階で、「子供が欲しいと考えている」「できなくて実は悩んでいる」「あなたにも検査を受けて欲しい」「今度病院で不妊治療説明会があるから、一緒に行かない?」などと、旦那様とお話してみてくださいね。
二人目不妊の方は、検査時の上の子の預け先を確保
子連れで受けられる検査と、受けられない検査があります(内診台で行う検査は子供が傍にいてもいいけど「子宮卵管造影検査」や「CT/MRI」は子供同伴不可、など)ので、病院と確認してみてください。
後悔しないために、早めの検査をおすすめします!
妊娠を考えたら、自己流で妊活を始めるより、病院で検査を受けて原因を把握することからスタートした方が妊娠への近道だと思います。一歩踏み出すのには勇気がいると思いますが、時だけが過ぎて後々に後悔することがないように、早めのスタートをおすすめします。後戻りできないところまで時間が経ってから「もう少し早く始めておけば…」と後悔する人が1人でも減ることを祈っています!