歯列矯正での抜歯と非抜歯の決め手は何?それぞれを治療別に解説します

歯列矯正の治療の種類は様々ありますが、中でも「抜歯」が矯正過程に入っている場合と、そうで無い「非抜歯」の場合の違いはご存知でしょうか?今回は歯列矯正での抜歯に注目して様々な疑問を解説いたします。

歯列矯正での抜歯・非抜歯を左右する歯槽骨(しそうこつ)とは?

顎の骨の中でも特に、歯を支えているU字型をした部分のことです


乳歯は20本、永久歯は親知らずを含めて32本からなります。食べ物を切るシャベル状の切歯、尖端が突出し切り裂くための犬歯、すり潰しに便利な臼状の歯があります。

人の歯は一生の間に一回萌え替わることから二生歯と呼ばれます。切歯、犬歯、小臼歯は二生歯ですが、大臼歯は一生歯で、新しく萌え替わることはありません。

この歯を支えているのが歯槽骨で、歯周病などが進行すると歯槽骨が溶けて歯茎が下がり最終的には「歯が抜ける」という状態になってしまいます。

※萌えるは「はえる」と読みます。「歯がはえる」という時にはこの漢字を使います。



歯列矯正で抜歯をする理由

1.歯槽骨の大きさと歯の大きさのバランスを整える為


一般的に歯槽骨の大きさと歯の大きさのバランスが取れていれば、歯はでこぼこにはならずに綺麗に並びます。
しかし、歯槽骨に対して歯が大きかったり、また逆に歯の大きさに対して歯槽骨が小さかったりすると、並びきらずにでこぼこになってしまいます。

歯列のでこぼこが軽度であれば歯列矯正によって、もしくは早い段階から矯正を始めて、歯槽骨を少し広げてあげれば歯は綺麗なアーチ状に並べることができる方もいます。

これが重度だと綺麗には並べることができるかもしれませんが、外側に広がってアーチ状に並んでしまいます。

その結果口を閉じても口元が出て、もっこりした感じになってしまいます。それを防ぐ為に抜歯して歯を間引き歯槽骨と歯のバランスを取ります。

2.第2大臼歯がまっすぐ並ぶようにする為


歯を歯列矯正で無理に並べようとすると、1番奥の第2大臼歯が斜めになってしまうことがあります。

この第2大臼歯は歯の中で2番目に大きい歯で、噛み合わせに重要なのです。第2大臼歯がまっすぐ並ぶように、その他の歯を歯列矯正で抜歯する必要があります。

3.矯正治療後の「後戻り」を防ぐ為


個人差はありますが歯列矯正は綺麗な歯並びにした後、後戻り(歯が元の位置に戻ろうとすること)しないように保定装置(ほていそうち・「リテーナー」と言います)を1〜2年間使います。

しかし、抜歯をせずに狭い顎に無理に矯正をして歯を並べると、通常より後戻りが激しくなると言われています。その為に抜歯によって適切な顎と歯のバランスを保ちます。

4.出っ歯を治す為


出っ歯を治すには前歯を内側に入れる分だけのスペースが必要になります。その為に歯を抜歯し、抜歯したスペースを利用して前歯を内側に入れます。

抜歯をする歯の選択基準

1.状態の良くない歯


綺麗な歯はなるべく残し、寿命が短いことが多い歯を優先的に抜歯するようです。

例えば、大きな虫歯のある歯、歯周病(歯槽膿漏)が進んでいる歯、過去の治療で神経が無い歯、かぶせ物をしている歯、生まれつき形に異常がある歯、生まれつき歯の質や根の部分が弱い歯、等です。

もちろん治療方法によっては綺麗な歯が抜歯対象になる場合もあるので、歯科医とよく相談してみましょう。

2.小臼歯


小臼歯は犬歯と大臼歯の間にある歯で、左右2本ずつの、上下で計8本あります。この小臼歯は抜歯の対象になりやすいそうです。なぜ小臼歯を優先的に選んで抜歯するのでしょうか?

小臼歯は他の歯と比較すると重要な役割を担っているわけではなく、根も他の歯と比較して短いことから、矯正治療をする時に優先して抜歯することが多いのです。

3.親知らず


親知らずはその歯の状態によっては、残しておいた方が良い場合と、抜歯しなければならない場合があります。

親知らずの歯の向きに問題が無く、虫歯や歯周病で本来の永久歯が無くなってしまった状態や生まれつき永久歯が少ない状態なら、親知らずを残して咬み合わせの歯として役立たせる選択肢もあります。

一方、親知らずが歯の動きを邪魔してしまう場合や、親知らずの向きに問題があり歯並びを悪くする原因になっている場合は、矯正治療をするために親知らずを抜歯する必要があります。

4.過剰歯(かじょうし)


過剰歯と呼ばれる余計な歯が歯茎の中に埋まっていると、歯の隙間が空いてしまったり、歯並びが悪くなる原因になります。

さらに過剰歯は矯正治療で歯を動かす時に邪魔になるだけでなく、場合によっては隣の健康な歯の根を傷つけてしまうこともある為、見つけたら抜歯しなければなりません。



歯列矯正で抜歯をしなくても済むケースも

より早い時期に矯正を始めた場合


乳歯が残っている間に矯正治療を開始して(1期治療)、乳歯がすべて永久歯に萌え替わるまでに、矯正治療によって顎の成長を引き出すことで、結果的に顎が広がり歯のスペースが確保できれば非抜歯で済みます。

正しい咬み合わせになっていること


抜歯をしないで矯正治療ができる条件の1つは、乳歯がすべて永久歯に萌え替わった中学生以降の時点で、上下の前歯境目のずれが2mm以内程度であることです。

上下の永久歯の本数の過不足が無いこと


親知らずを含めずに、歯の数を数えると、上下左右それぞれ7本ずつで合計28本です。生まれつき部分的に永久歯がない先天性欠損(せんてんせいけっそん)の部分があると、その部分で上下の咬み合わせがずれてしまいます。この場合だと、抜歯をしないと矯正治療ができない可能性があります。

上の歯が1本少ない場合は、抜歯をしないで矯正治療ができることも多いですが、もし下の歯だけが1本少ない場合は、上の歯の抜歯をするか、下の歯1本分をデンタルインプラント、入れ歯、ブリッジのうちいずれかで補う必要が出てくるため、矯正歯科医と一般歯科医の連携が大切になるケースです。

歯並びのずれが少ない場合


歯を削ることによって歯を小さくし、歯並びを治すことができます。6本の前歯を1mm程度小さくすると、6mmの隙間が生まれます。この隙間を使って前歯をきれいに並べます。特に大人の方で前歯だけを治したい方に利用する方法のようです。

抜歯の痛みはどのくらい?

個人差はあるが、手術中は麻酔が効いているので痛くないという意見があります


一般の方の意見
もちろん麻酔をして、効いているかを確認してから手術になりますので痛みは感じないと言われています。
手術中に少しでも痛みを感じるようなら医師にすぐ相談しましょう。

ただし、全身麻酔ではないので抜く際に、歯を持っていかれるような感覚はあるそうです。緊張しているとその感覚を痛みと勘違いする場合があるそうなのでリラックスしましょう。

手術後、麻酔が切れると一般的な治療での抜歯をした時は、歯の状態が悪い為に痛みも出血もそれなりに出ると言われています。特に親知らずの場合出血も痛みも他の歯より強めに出ると言われています。

しかし矯正の抜歯は治療方法によっては、綺麗な歯を抜歯する場合もあります。綺麗な歯は歯根も痛んでいないので抜けやすいようです。

また手術後の痛みも治療での抜歯よりは痛みを感じないと言う方が多いようです。
抜歯後の痛みは、出血と麻酔が引いたら食事をして、処方された薬(痛み止め等)を飲めばある程度で治まるようです。

抜歯の時間はどのくらいかかる?

抜歯時間は10分程度


一般の方の意見 矯正治療で必要があって抜歯をする場合、10分程度で抜けることが多いです。腫れや痛みの面でも他の抜歯に比べて少ないようです。ただし、抜歯する歯の根が曲がっていたり、骨の深くに潜っていると時間はかかります。

歯列矯正で抜歯にかかる治療費はいくら?

費用は5千円〜1万円程度


矯正治療で抜歯が必要な場合は保険診療で行うことはできません。費用は1本、5千円〜1万円程度です。ただし、医療費控除の対象になりますので、領収書は必ず保管しておいて下さい。

※医療費控除とは、自分自身や家族のために、その年の1月1日から12月31日に10万円以上の医療費を支払った場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。 申告し忘れても、5年前までさかのぼって医療費控除を受けることができます。

抜歯手術の注意点

服薬している方や持病がある方、妊婦の方などは事前に主治医に確認を


今現在、他の薬を服用されている方、持病がある方、妊娠および妊娠の可能性のある方やアレルギーのある方は抜歯を担当する主治医に確認しましょう。

抜歯前日


いつも通り過ごしてよいですが、抜歯の前日は体調を整えて十分な睡眠をとりましょう。また、翌日のために、できるだけ飲酒は控えましょう。

抜歯当日


服装もできるだけ体を締め付けない楽な格好がよいでしょう。食事は、抜歯の2~4時間前までに消化のよいものを食べてください。

食後はしっかりハミガキを行って、清潔な歯で歯科医院に行きましょう。処置時間が長引いたときのために、あらかじめトイレは済ませましょう。

抜歯には麻酔を使用します。安全な治療を行うために、問診票や担当医の質問には正確に答えましょう。わからないことや、体調が思わしくなければ正直に伝えてください。

特に抜歯後の過ごし方や注意点、薬の服用方法についての話は大切です。万が一聞き逃したことがあれば連絡して確認しましょう。

抜歯後


小臼歯抜歯などケースによっては、手術後、止血用のガーゼを噛んだ状態で、すぐに帰宅できることもあります。その際は、ガーゼを外していい時間がくるまで、しっかり噛んで止血しましょう。

抜歯後の生活

1. 患部を舌や歯ブラシで触ったり、激しいうがいは避けましょう


止血用のガーゼを外した後も、しばらく少量の出血があるかもしれません。しかし気になるからと言って激しいうがいをして、患部にたまった血を洗い流さないようにしてください。

患部にたまった血は血餅(けっぺい)と呼ばれる赤色や赤黒い色のゼリー状のかさぶたです。皮膚のかさぶた同様、血餅は口の中の患部を保護します。

何らかの刺激で血餅がとれると、治癒が遅れたり、顎の骨(歯槽骨)がドライソケット(抜歯した骨の部分がむき出しになってしまうこと)の状態になっている恐れがあります。

抜歯後のうがいは、水をそっと口に含んで静かに吐き出すようにして、傷口を指や歯ブラシで触らないように注意しましょう。

2. 激しい運動や長風呂、飲酒は控えましょう


血のめぐりが良くなり、再び出血したり、痛みや腫れが強くなる恐れがあります。安静に過ごしましょう。

3. 薬は歯科医師の指示を守って服用しましょう


抜歯後、感染を予防する抗菌剤(抗生物質製剤)や、痛み止めのお薬を処方される場合があります。薬の種類によって、効能や服用方法が異なります。

例えば、抗菌剤は、菌が薬に対する耐性をもってしまう耐性菌を防ぐために、指示された服用方法・日数を守り、きちんと飲み切ることが大切です。飲み忘れに注意し、自己判断で服用をやめないようにしましょう。 ※こんなときは歯科医院に相談を
■薬を服用したら、発疹や下痢、胃のむかつきや嘔吐がおきた時
■ガーゼで20分以上しっかり咬んでも、口の中いっぱいになるほど、出血が止まらない時
■我慢できないほどの激しい痛みが3日以上続き、痛みが軽減しない時、など

自分が納得いくまで相談してみましょう


歯列矯正ではその歯の状態によっては萌えたばかりの永久歯や、綺麗な永久歯を抜歯することがあります。綺麗な歯を抜歯することには抵抗があるかもしれませんが、これらの歯を無理に残すことによってリスクがある場合もあります。

しかし1度抜いてしまった歯は元には戻せないので、適切な診断と信頼できる歯科医の下で抜歯することをお勧めします。治療法や金額面で疑問がある場合は後悔しない為にも納得いくまで相談してみましょう。