卵巣嚢腫茎捻転は誰もがかかる可能性が!?原因や治療法を解説

卵巣嚢腫の大きさが5cmを超えると茎捻転(けいねんてん)が起こる確率が高くなります。卵巣嚢腫茎捻転になる原因や治療法、手術や入院について解説します。卵巣嚢腫がある方はぜひ知っておいて欲しい茎捻転についてまとめました。

卵巣嚢腫茎捻転とは

卵巣嚢腫が原因で起こる茎捻転は5cm〜15cmくらいの卵巣嚢腫に最も起こりやすいと言われていますが、5cm未満でも15cmより大きくても起こる可能性はゼロではありません。また正常な卵巣でも茎捻転が起こるという報告もあります。

茎捻転とは

卵巣は子宮と骨盤から伸びた靭帯によって支えられています。卵巣囊腫が大きくなるとその重みで卵巣が下がり、靭帯が引き延ばされます。

引き延ばされた靭帯は茎のように細く長くなりねじれやすい状態になっているため、激しい運動など何かのタイミングで卵巣が動くと靭帯がねじれてしまうことがあります。このように卵巣を支えている靭帯がねじれることを茎捻転(卵巣嚢腫茎捻転)と言います。 卵巣嚢腫茎捻転はペンダントをイメージするとわかりやすいです。チェーンが太いとペンダントが捻れることはありませんが、細いチェーンに大きめのペンダントトップがぶら下がっているとすぐにトップが回転してチェーンが捻れてしまいます。

同じように卵巣を支える靭帯が太ければ捻れませんが、靭帯が細くなり卵巣囊腫が大きくなると捻れやすくなります。

原因

卵巣囊腫茎捻転が起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、激しい運動やセックスなどでねじれることもあるようです。

また卵巣嚢腫が5cm〜15cmの大きさだと茎捻転が起こりやすく、小さかったり大きすぎたりすると茎捻転が起こりにくいと言われています。しかし5cm未満の卵巣嚢腫でも茎捻転になることもあるので、卵巣囊腫がある人は茎捻転の危険性を知っておきましょう。

卵巣嚢腫茎捻転の症状

卵巣嚢腫茎捻転の主な症状は強い下腹部の痛みです。非常に強く立っていられない程激しい痛みのため救急車で運ばれてくる人も多いようです。下腹部痛で病院を受診して、始めて卵巣囊腫があることを知る人もいます。捻れている部分が元に戻ることもあり、この場合は痛みも無くなります。 卵巣を支えている靭帯には卵巣に血液を循環させる血管が通っています。茎捻転によって半回転(180度)以上捻れると血管が圧迫され卵巣への血流が滞ります。

この状態が続くと卵巣で炎症が起こり、更なる痛みと発熱、吐き気、出血などが起こります。ねじれている時間が長くなると組織が壊死してしまいます。最悪な場合には卵巣が破裂し腹膜炎を起こすこともあります。 卵巣嚢腫茎捻転の症状は急性虫垂炎(盲腸)の痛みとよく似ています。盲腸は右側にあるため、右側の卵巣嚢腫が茎捻転を起こした場合は急性虫垂炎との違いがわかりにくく判断できないこともあります。激しい下腹部痛で救急外来を受診したときは「卵巣囊腫があります」と伝えるようにしましょう。

卵巣嚢腫茎捻転が起こる確率

卵巣嚢腫茎捻転は卵巣嚢腫の約10%で起こると言われています。また茎捻転を起こした卵巣嚢腫の40〜65%が皮様性嚢腫という報告もあります。

茎捻転が起こりやすい年代は20〜40代と言われています。嚢腫のない卵巣でも稀に茎捻転を起こすこともあります。

茎捻転は右側の卵巣で起こりやすいと言われています。左側にはS字結腸があるため卵巣が回転しにくいことが理由と考えられています。左右での卵巣嚢腫茎捻転の発生比率は1:2(左:右)です。

また癒着があると茎捻転が起こりにくいため、チョコレート嚢腫や悪性腫瘍の場合はあまり茎捻転が起こらないと言われています。

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卵巣嚢腫茎捻転の治療や手術について

茎捻転を起こしたときは基本的には手術を行います。以前は開腹手術を行い、卵巣と卵管などの付属臓器を摘出していましたが、最近は必ずしも卵巣を摘出しなくてもよいと言われています。

卵巣嚢腫茎捻転の手術

卵巣嚢腫茎捻転が起こっても、手術をして捻れている部分を元に戻すと9割程度は卵巣の機能が正常に戻ることが報告されています。

捻れ部分を元に戻すだけならば腹腔鏡手術で実施できます。症状が悪化し卵巣機能の復活が望めない場合や閉経している場合は開腹手術を行い、卵巣と卵管などの付属臓器を摘出します。 卵巣を温存できるかどうかは手術してみないとわからないので、まず腹腔鏡手術を行い卵巣を摘出する必要があれば開腹手術に移行することになります。腹腔鏡手術は全身麻酔で行うため、卵巣を温存できるかどうかは年齢や妊娠希望の有無、茎捻転の症状などによりお医者さんが判断します。 また開腹手術を受けたことがあると腹腔鏡手術を行えないため、最初から開腹手術を行うことになります。開腹手術はお臍の下から縦に切る方法と下着のラインの下辺りを横に切る方法があります。開腹手術では10〜15cm程度の傷が残ります。 ▼関連記事

入院期間

腹腔鏡手術の入院期間は4〜7日、開腹手術の入院期間は1〜2週間です。腹腔鏡手術は傷口が小さく回復が早いため、開腹手術に比べて入院期間が短くなります。

入院費用

腹腔鏡手術は電気メスなどの特殊な機器を使用するため、開腹手術よりも手術代が高額になります。しかし開腹手術は腹腔鏡手術より入院期間が長く、その分入院費用は加算されます。一般的な入院費用は腹腔鏡手術で15万〜25万円程度、開腹手術で12〜22万円程度です。

卵巣嚢腫茎捻転は下腹部の激痛に堪え兼ねて救急外来を受診することがよくあります。休日や夜間に救急外来を受診すると受診料がプラスされることもあります。 卵巣嚢腫茎捻転による入院・手術は高額医療費制度が適用されるので、上限額を超えて支払った分のお金は後日戻ってきます。

例えば、所得が月額28万~50万円の方は、ひと月の自己負担の上限が約8万円と定められています。もし退院時に25万円支払っても、健保協会や健保組合などで所定の手続きを行うと上限額との差額約17万円が払い戻されます。(2015年12月の情報)

また民間保険に加入している場合は手術や入院に対して給付金が支払われるかも確認しましょう。 ▼関連記事

術後はどのように過ごせばいい?

卵巣嚢腫茎捻転を起こすと緊急手術となる場合が多いです。急な手術から入院生活で家庭や仕事など心配になりますよね。いつから普通に生活できるのか?仕事復帰はいつから?と気になることがいっぱいです。一般的な術後の生活についてご紹介します。

退院後の過ごし方

入院中は医師や看護師が回復状況を把握してくれますが、退院後は自分の感覚で生活ペースを元に戻していきます。退院時に「退院治療計画書(退院療養計画書)」という退院後の注意点や生活の目安を書いた用紙がもらえます。

基本的にはその用紙を参考に、傷の痛み方をみながら過ごしましょう。ズキズキと痛むようなら無理をせずにゆっくりと過ごし、痛みもなく動けそうであれば徐々に普通の生活を送るようにします。退院後の生活の目安についてご紹介します。 自宅安静とは基本的に家の中で簡単な家事などを行い、疲れたら横になるような生活です。無理のない程度に動く方が術後の癒着も少なく回復も早いと言われています。

しかし手術前後の絶飲食で体力が落ちているので無理しないでください。食事制限は基本的にありませんが、次の外来診察までは飲酒は控えた方がいいしょう。退院時に医師から許可が出ていればOKです。

感染症や術後イレウスに注意!

腹腔鏡手術でも開腹手術でも手術後の合併症に気をつけましょう。代表的な合併症が感染症と術後イレウスです。 【感染症】
感染症とは手術した傷口から細菌が入り感染することです。細菌感染により化膿したり痛みを感じたり発熱することもあります。手術室や手術器具は充分に消毒されているため無菌状態で手術が行われます。しかしまた術後は抗生物質を使用し細菌感染を防いでいますが、稀に感染症を起こすこともあります。

清潔を保持するように心がけ、手術創からの感染を防ぎましょう。
手術から数日経っても出血が続く、傷みがひどい、38度以上の高熱、手術跡が赤く腫れているなどの症状があるときは病院に連絡しましょう。 【術後イレウス】
イレウス(腸閉塞)とは大腸や小腸が正常に働かずに消化物が腸に詰まっている状態です。胃から腸に運ばれた消化物は腸の蠕動(ぜんどう)運動によって肛門の方に運ばれますが、腸閉塞では腸が正常に動かないため腸が膨張しお腹が張ったり痛くなったり便秘を起こしたりします。

さらに消化物が胃の方に逆流して吐き気や嘔吐が起こることもあります。 手術時の麻酔によって腸の働きが一時的に止まりますが、麻酔がきれれば元の様に蠕動運動を始めます。しかし腸の動きが正常に戻らないと術後イレウスの可能性があります。術後イレウスは手術から数ヶ月後に起こることもあります。ひどい便秘、お腹の張りや吐き気を伴う腹痛があるときは注意してください。

※術後イレウスは麻痺性イレウス、機能性イレウスとも呼ばれます。

卵巣嚢腫は茎捻転の可能性大!

女性ならば誰でもかかる可能性がある茎捻転。
茎捻転を起こしてすぐに手術を受ければ卵巣機能は正常に戻りますが、放置しておくと卵巣摘出、最悪な場合は卵巣が破裂して腹膜炎を起こすことも考えられます。卵巣嚢腫茎捻転はどんなときに起こると明確にわからないので、早期発見・早期治療が心身への負担を最小限に抑える一番の手段と言えます。

卵巣嚢腫の人もそうでない人も茎捻転について知っておくと、急に下腹部痛が起きても「もしかしたら…」と思い出せるかもしれませんね。 ▼関連記事