卵巣嚢腫の手術ってどんなもの?入院期間や費用について解説

卵巣囊腫の摘出手術では、傷口が小さく回復も早い腹腔鏡手術が多く行われています。腹腔鏡手術について、その方法や麻酔、病院の選び方、入院期間、費用、術後の回復、仕事復帰など気になることをまとめました。手術には怖いイメージもありますが、ちゃんと知識を得ることで落ち着いて手術に望めますね。

卵巣嚢腫の手術ってどんな手術?

卵巣囊腫の手術には腹腔鏡手術と開腹手術の2通りがあります。以前は手術と言えば開腹手術でしたが、技術の進歩とともに傷口が小さく回復も早い腹腔鏡手術という手術方法が確立されました。現在、卵巣嚢腫の摘出手術は腹腔鏡手術が主流となっています。卵巣囊腫の腹腔鏡手術に関して、開腹手術との比較を交えながらご紹介します。

腹腔鏡手術(腹腔鏡下手術)とは

腹腔とはお腹の中のことで、腹腔鏡とはお腹の中を観察するための内視鏡(カメラ)のことです。胃カメラや腸カメラなども内視鏡の一種です。

腹腔鏡手術は腹腔鏡をお腹の中に入れ、モニターに映し出される映像を見ながら手術を行います。おへそと左右の下腹部に1cm前後の小さな穴を開けて、おへそ部分から内視鏡を入れ、左右下腹部の穴からは電気メスなどの専用の器具を入れたり切除した嚢腫を取り出したりします。器具を動かすスペースを確保するために、お腹の中に炭酸ガスを入れ膨らませます。

腹腔鏡手術では卵巣囊腫の中身を抜いてから嚢腫の膜を摘出するので、1cm程度の穴から嚢腫を摘出することが可能です。

腹腔鏡手術を受けられる目安

全ての卵巣囊腫を腹腔鏡手術で摘出できるわけではありません。次のような場合には腹腔鏡手術を行えません。

■卵巣囊腫が大きい(目安は10cm以上)
腹腔鏡手術で摘出できる嚢腫の大きさは10cm程度と言われており、10cmより大きいときは開腹手術を勧められます。事前の画像診断よりも実際のサイズが大きいこともあります。

■悪性の疑いがある
悪性腫瘍とはガンのことです。腹腔鏡手術を行うとガン細胞が拡散することもあるため、悪性腫瘍の疑いがある場合は腹腔鏡手術よりも開腹手術がよいと言われています。また開腹手術の方が悪性腫瘍の有無や転移などを目視できるため、安全性を優先するのであれば開腹手術の方が確実です。

■開腹手術を受けたことがある
開腹手術を受けると約9割で術後癒着が起こると言われています。臓器や組織の癒着があると腹腔鏡手術を実施できません。

※手術の傷が治るときに、通常であれば離れている周辺の臓器や組織も一緒にくっついてしまうことを癒着(術後癒着)と言います。

腹腔鏡手術のメリットと注意点

腹腔鏡手術には多くのメリットがありますが注意することもあります。お医者さんからの説明もしっかりと聞き、納得した上で手術を受けましょう。

腹腔鏡手術のメリット

腹腔鏡手術には次のようなメリットがあります。

【1】術後の傷が目立たない
おへそ近くに開ける穴はおへその縁の辺りになるので術後はほとんど目立ちません。また左右下腹部の傷も大変小さく下着に隠れる部分にあるため気にならなくなります。

【2】傷口の痛みが少ない
3〜4カ所に穴をあけますが、傷口は1cm程度と小さいため開腹手術に比べて術後に感じる痛みも少ないです。手術直後は多少痛みを感じるかもしれませんが、退院するころには切開の痛みは弱くなり、退院1週間後には痛みがほとんど無くなります。

【3】癒着が少ない
開腹手術では高い確立で癒着が起きると言われていますが、腹腔鏡手術ではこの癒着を最小限に抑えることができます。

【4】入院期間が短い
腹腔鏡手術での入院期間は4〜7日程度です。開腹手術では7〜14日程度入院することになります。

【5】早く社会復帰できる
仕事復帰は手術から2週間後、運動や旅行は手術から4週間後と言われていますが、必ず主治医の先生と相談してください。退院から2〜3週間後に外来での検診があります。

腹腔鏡手術の注意点

腹腔鏡手術には簡単にできるというイメージが先行してしまいがちですが、カメラのモニター越しに手術を行うので高度な技術が必要となります。

危険な状態になるのはごく稀と考えられているため、必要以上に心配しなくてもいいですが手術にはリスクが伴うことも認識しておきましょう。腹腔鏡手術で問題となるデメリットは次の通りです。 【1】他の組織への傷と出血
モニターを見ながら手に伝わる感触を頼りに手術を行うので、他の臓器や血管などにメスが当たってしまうことも稀にあります。予期せぬ出血が起きると止血しにくいため、どうしても止血できない場合は開腹手術に移行します。

【2】囊腫が大きい・悪性のときは開腹手術
事前の画像診断よりも病巣が大きく摘出できない場合や悪性腫瘍だった場合は開腹手術に移行することもあります。

【3】手術時間が長い
開腹手術に比べて手術時間が長くなります。

【4】炭酸ガスによる膨満感
お腹を膨らませるために注入していた炭酸ガスが抜けきるまで、膨満感(お腹が張る感じ)を感じることがあります。膨満感が強いと吐き気を感じる方もいます。

全身麻酔下ではさまざまな影響が出る

腹腔鏡手術は全身麻酔が必要となります。全身麻酔のリスクなどを事前に理解しておきましょう。

例えば全身麻酔では自発呼吸が止まるため、人工呼吸器を装着しますが術後にうまく自発呼吸に戻れずに危険な状態に陥ることも稀にあります。また麻酔が抜けるときに激しい倦怠感やめまい、吐き気などを感じることもあります。

手術に伴い、このような数々の全身状態の変化が起こりますが術中は医療従事者が意識のない患者さんを守る役割をしてくれます。疑問点・不安なことがあることはごく普通のこと。担当医としっかり相談して決めて安心して手術に臨めるようにしていきましょう。

病院の選び方

腹腔鏡手術のデメリットも考えると手術を受けるのが怖くなりますよね。しかし卵巣囊腫のある多くの方が安全に腹腔鏡手術を受けています。信頼できる病院で技術の確かなお医者さんに執刀してもらえたら、安心して手術に臨めますね。病院選びの目安として日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医を参考にするのもいいですね。

▼日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医一覧

技術認定医一覧 | 技術認定医 | 一般の方へ | 日本産科婦人科内視鏡学会
日本産科婦人科内視鏡学会は、本邦における産科婦人科領域における内視鏡下手術の進歩と発展を図り、国民に対し安全で安心な医療を提供する重大な責務を負っていいます。

入院期間や費用

腹腔鏡手術の入院期間や費用についてまとめました。ただし、入院期間や費用は病院によって異なるので、平均的な数値をご紹介します。

入院期間

切開する部分が少ないため治りが早く術後3〜5日で退院できます。手術の前日もしくは前々日に入院するため入院期間は4〜7日程度の人が多いようです。入院中の過ごし方の一例をご紹介します。

(例)
■入院1日目
夕飯を食べ、以降絶飲食。シャワー可。
全身麻酔下での誤嚥のリスクを軽減するため、術後腸管が動いたことが確認されるまで絶飲食となります。

■入院2日目(手術当日)
手術→目が覚めたら部屋へ移動し、以降はベッド上で過ごす。
術後、麻酔が覚めたら部屋へ移動します。腹腔鏡手術で低侵襲とはいえ、全身状態を回復するために手術当日はベッド上安静です。

■入院3日目(術後1日目)
離床を開始し、退院に向けての準備が始まります。尿道カテーテルを抜かれる。
排ガスがあり、腸蠕動音が聞こえ腸管が正常に動いていることを確認し、重湯から食事スタート。また離床・歩行練習を開始します。早くから離床し歩行練習をすることで血行が促進し術後の回復が早くなるのです。

■入院4日目(術後2日目)
徐々に普通食に戻す。徐々に歩くように。
手術創の痛みは残ると思いますが、この日も歩行練習は欠かさず行いましょう。痛むときは痛み止めを飲み、痛みをコントロールしながら離床を進めることが大切です。

■入院5日目(術後3日目)
術後の術創からの感染などがなければ晴れて退院となります。生活上の疑問点は、入院中に医師や看護師に聞くなどして解消しておきましょう。

入院2〜5日は感染予防のためシャワーに入ることが出来ません。術後2日目にはだいぶ痛みも和らぎ、歩いたり売店に行ったりすることができるようになるでしょう。入院中は生活にさまざまな制限が生まれることもありますが、順調に回復すればもとの生活に近づくことはできますよ!

入院費用

腹腔鏡手術は電気メスなどの特殊な機器が必要となるため、開腹手術より手術費用が数万円高くなります。腹腔鏡手術での入院費用は15万〜25万円程度です。

そこで、腹腔鏡手術による入院では高額医療費制度が適用されます。高額医療費制度とはある月(1日〜月末まで)に入院や治療などで支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合に、限度額を超えた分が払い戻される制度です。自己負担限度額は所得により異なります。

例えば、所得が月額28万~50万円の方なら自己負担の上限が約8万円となり、それ以上の医療費は健保協会や健保組合、市町村などから支給されます。事前申請もできます。健康保険に加入していれば利用できる制度なので一度確認してください。(2015年12月の情報)

また民間保険に加入している場合は手術や入院に対して給付金が支払われるかも確認しましょう。

腹腔鏡手術用の機器がない病院では腹腔鏡手術を行えません。また東京などの都市部では手術の予約をしても数ヶ月待つこともあるので、手術の計画は早めに立てましょう。

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術後はどのように過ごせばいい?

回復や社会復帰が早いと言われる腹腔鏡手術ですが、術後はどのように過ごせばいいのか?お風呂は?家事は?仕事はいつから?と気になることがたくさんあります。術後の過ごし方についてご紹介します。

退院後の過ごし方

入院中は医師や看護師が回復状況を把握し指導してくれますが、退院後は自分の感覚で生活を元に戻して行きます。基準となるのは傷口の痛みです。

ズキズキと痛むようなら無理をせずにゆっくりと過ごします。痛みが無く動けそうであれば、家事など普通の生活を送るようにします。手術前後の絶飲食で体力が落ちているので無理しないでくださいね。

退院後の生活の目安についてご紹介します。

■術後5日目:シャワーOK
■術後6日目:入浴OK
■術後7日目まで自宅安静
自宅安静とは基本的に家の中で簡単な家事などを行い、疲れたら横になるような生活です。家事は意外に立ち仕事が多いので、手術から1週間くらいは無理をしないように気をつけましょう。

■術後8日目:自転車・自動車の運転OK
■術後2週目:仕事復帰OK
■術後4週目:運動・旅行OK
…となる人が多いようです。

仕事はいつから?

腹腔鏡手術を受けた後の仕事復帰は一般的に術後2週間と言われていますが、デスクワークなら術後10日でも大丈夫と言うお医者さんもいます。立ちっぱなしの仕事をしている方は、復帰直後は勤務時間を短めにしてもらうなど無理のないようにしてください。傷の大きさや回復度合いは人それぞれなので必ず主治医の先生に相談しましょう。

感染症、麻痺性イレウスなどの術後合併症に注意!

術後生活する上で最も気をつけなければならない合併症として、手術創から細菌が侵入することにより起こりうる感染症、腸が空気に触れたことや麻酔の影響による麻痺性イレウス(腸閉塞)などがあります。

これらは、異常を早期発見することにより重大化を未然に防ぐことができると考えられているため、日々の観察が大切になってきます。それぞれ観察項目を列挙してみます。

【感染の4徴候】これらがあるとき、何らかの感染症である可能性が高いため受診をおすすめします。
・38度以上と高温の発熱
・手術創が腫れている
・手術創が赤くなっている
・痛みを感じる

これらは術後30日以内に症状が強く現れる場合が多いのですが、30日を過ぎてもこのような症状があった場合は手術創感染が考えられるためすぐに受診することおすすめします。

【麻痺性イレウス(腸閉塞)】内臓が空気に触れたことにより腸管がくっつき麻痺してしまうことです。下記のような症状がある場合、受診をしましょう。
・便秘(2〜3日以上出ない)
・排ガスが出ない
・吐き気、嘔吐
・お腹が張っているような感じ

これらは術後時間が経ってから症状が現れることが多いそうです。 気になることがあればすぐに受診するようにしましょう。

卵巣囊腫を摘出して健やかな日々を

どんな手術でもメリットがあればデメリットもあります。手術や麻酔に関して万一でも起こりうるリスクに関して、お医者さんは説明してくれますが、それが余計に不安を煽ることもありますよね。

もっと大きくなるかもしれない、いつ破裂するかわからない、不妊の原因かもしれない、様々な不安を抱えてしまいますよね。女性として、卵巣を摘出することは大きな決断であるという方も多いのではないでしょうか。

医師・看護師と相談し自分に合ったベストな治療法を見つけていきましょう。