妊娠初期は、赤ちゃんの神経系統や内臓が発達する大切な時期です。この時期に飛行機を利用する場合、多くの方が赤ちゃんへの影響を心配するのではないでしょうか。今回は、フライト中における放射能の影響の有無や飛行機利用のリスクを解説し、安心して飛行機に乗るための妊婦向けサポートなどもご紹介します。
妊娠初期の飛行機は大丈夫?
制限は無いがリスクを承知の上で
妊娠初期の飛行機利用に関しては、特に制限がありません。しかし、飛行機は地上と少々環境が異なるため、体調に影響する可能性もあります。その点を十分理解したうえで、無理のないフライトプランを立てましょう。
【妊娠初期の飛行機利用におけるリスク】
◇つわりの悪化
◇時差ボケになりやすい
◇環境の変化による体調悪化
◇エコノミークラス症候群
◇インフルエンザや風邪などの感染症
可能であれば安定期に変更を
もし旅行日程を変えられるのであれば、胎盤の安定する妊娠16~27週に変更しても良いでしょう。妊娠初期に飛行機に乗るとしても、心音が確認できてから(妊娠12週頃)が良いとされています。
また、つわりのピークはひとそれぞれですので、自分の体調とよく相談し、医師のアドバイスを参考にして日程を決めるようにしてくださいね。
妊娠初期の場合、航空会社に妊婦と伝えるべき?
妊娠している旨は、予約時に航空会社へ伝えましょう。妊娠週数や同乗者の有無によって、必要事項を丁寧に案内してもらえます。
座席に配慮してもらえることも
妊娠していると、足腰が疲れやすいものです。空きがあれば、優先的にバルクヘッド席(前に座席がない広めの席)にしてくれることがあります。
もしバルクヘッド席が空いていなくても、トイレの近くにしてくれたり、トイレに行きやすいよう通路側にしてくれたりと、妊婦ならではの配慮をしてもらえるでしょう。
フライト中の体調を気遣ってもらえます
搭乗客に妊婦がいることは、CAにも伝わります。もし飛行中に体調が悪くなることがあれば、事情を知っているCAが適切に対応してくれることでしょう。
また多くの航空会社では、食事制限のある妊婦のために、ダイエット食を用意しています。必要であれば、事前に航空会社に問い合わせてみましょう。
妊娠中はいつまで飛行機に乗れる?
日本の主要航空会社では、妊婦の飛行機利用に関する規定を、どのように定めているのでしょうか。
JAL・ANAの場合
JALとANAで定められている規定は以下の通りです。
【国内線】
◇出産予定日28日前~8日前までの搭乗
診断書の提出:必要
医師の同伴:不要
◇出産予定日7日前以降の搭乗
診断書の提出:必要
医師の同伴:必要
【国際線】
◇出産予定日28日前~15日前までの搭乗
診断書の提出:必要
医師の同伴:不要
◇出産予定日14日前以降の搭乗
診断書の提出:必要
医師の同伴:必要
出産予定日から28日以内の場合、妊婦1名に同伴できる幼児は1名だけです。また、2歳未満の幼児はチャイルドシートの利用が必須となります。
2歳の幼児に関して、チャイルドシートの利用は必須ではありませんが、いずれにしてもこの時期の幼児の同伴は座席が必要なため、小児料金が発生します。
※2016年1月28日の情報です。
診断書(ANA用)はこちら
「診断書」とは、搭乗の7日以内に発行された、「航空旅行をするにあたり健康上支障がない」という旨を医師が明記したものです。要件を満たしていれば、航空会社所定のものでなくても大丈夫です。
妊娠初期のX線検査や飛行中の放射能の影響は?
人間にX線は使われません
空港の保安検査場において、人体にX線は使われていません。人体が通る検査機は、高周波を発生させて金属を探知しているもので、母体や胎児への影響はほとんどありません。
もし心配であれば係員に妊婦であることを伝え、ボディタッチによる検査に切り替えてもらえましょう。
飛行中の放射能は問題ないレベル
大気中の放射能は宇宙から降り注いでいるので、高度が高くなればその分影響が大きくなります。しかし、旅行や里帰りでたまに飛行機に乗る分には、胎児への影響は心配する範囲ではないと考えられています。
例えば、東京~ニューヨーク往復のフライトで浴びる放射線量は、0.2~0.3mSvです。一般的に、100mGy(1mGy≒0.8mSv)未満の放射線量であれば、胎児に確定的な影響はないと言われています。 【参考リンク】
JALとANAの妊婦さんに優しいサービス
JAL:ママおでかけサポート
JAL国内線における、妊婦向けサービスです。サポート内容は以下の通りです。
◇空港内の補助
◇優先搭乗
◇事前座席指定
◇ママ向け冊子「ママ&ベビーおでかけサポートガイド」の配布。
「ママ&ベビーお出かけサポートガイド」は、機内での過ごし方や、ベビー連れママのお得情報などが載っており、出産後も役立つ情報満載です。 【参考リンク】
JAL国内線 – ママおでかけサポート(JALスマイルサポート)
ANA:ファミリーらくのりサービス
ANAの国内線・国際線における、妊婦向けサービスです。サポート内容は以下の通りです。
【国内線】
◇電動カートサービス(羽田空港第2ターミナル限定)
◇優先搭乗(事前改札サービス)
◇日本交通の「サポートタクシー」(羽田空港限定)
※サポートタクシーでは、経験豊富なドライバーによる送迎と空港内のサポートを受けることができます。
【国際線】
◇出発空港・乗り継ぎ空港・到着空港でのサポート
◇座席指定
また、国内線・国際線ともに、マタニティータグが配布されます。 【参考リンク】
ANAファミリーらくのりサービス [国内線]|Service & Info[国内線]|ANA
ANAファミリーらくのりサービス [国際線]|Service & Info[国際線]|ANA
海外の航空会社はこんなサービスも
海外の航空会社のなかには、とても繊細でユニークな妊婦向けサポートを実施しているところがあります。
アシアナ航空(韓国):プレマムサービス
アシアナ航空における、妊婦向けサービスです。サポート内容は以下の通りです。
◇優先搭乗
◇到着地での優先的な荷物引取り
◇電動車サービス(仁川空港のみ)
◇妊婦向けアメニティグッズや保温靴下の配布(一部路線のみ)
妊婦への優しい配慮が感じられるサービスですね!
エティハド航空(アラブ首長国連邦):フライングナニー
その名の通り、機内でのベビーシッターサービスです。保護者の目の届かないところで子供を預かることはありませんが、専門のトレーニングを受けたCAが、少しでもママの負担を軽くするよう、子供を寝かしつけたり、子供と遊んだりしてくれます。
妊婦の子連れ搭乗(特に乳幼児)ほど不安なものはありません。ぜひとも世界中に広まって欲しい、ユニークなサービスですよね!
最近話題のLCCでの対応は?
対応は航空会社によって異なります
LCCであっても、予約時に妊婦であることは伝えましょう。場合によっては診断書の提出を求められることがあります。
また、健康への配慮、荷物の上げ下ろしといった妊婦へのサービスは、航空会社や担当しているCAによってまちまちです。
座席が狭く、座席指定が有料です
LCCはできるだけ多くの乗客を詰め込むため、座席間隔が狭く、機内サービスもほとんどありません。よって、妊婦にはとても辛い環境と言えるでしょう。またLCCでは、一般的に座席指定が有料となるため、通路側やバルクヘッド席を気軽に選ぶことができません。体調に配慮が必要な妊娠初期でのLCC利用は、できるだけ避けたほうが良いでしょう。
飛行機に乗る時に必須の持ち物
フライト直後でも病院へ行けるよう準備を
フライト中、体調に心配なことがあったときのために、以下のものを携帯して搭乗しましょう。
◇母子手帳
◇健康保険証
◇滞在先の産婦人科(所在地・連絡先)
◇海外旅行傷害保険証(海外の場合)
◇海外旅行傷害保険のしおり(海外の場合)
※海外旅行傷害保険は、商品によって妊婦に対し免責になるものがあります。よく確認してから加入しましょう。
心配なときは旅行前に必ず医師に相談を
安全性に「絶対」はありません
妊娠初期の飛行機利用に関して、特に規定が定められていないといっても、早産経験がある方や、貧血の症状がある方など、健康上何らかの問題がある場合は、必ず医師に相談してから乗るようにしましょう。
また、全く健康上問題がなくても、「絶対」が約束された安全はありません。そのことを肝に銘じて、無理のないプランで飛行機利用してくださいね。
ストレスのないフライトを目指して
放射能の心配よりも快適なフライトへの努力を
ご覧いただいた通り、飛行機利用における放射能被爆の心配はほとんどありません。むしろ心配されるのは、座りっぱなしであることや、環境の変化による体への負担、感染症などでしょう。
マスクや着圧靴下などを利用して、快適なフライトをすることが、母体や胎児を守ることにもつながります。ストレスのないフライトを目指してくださいね!