人工授精の成功率やリスク、費用などの手順を徹底解説

今現在妊活をされている方やこれから妊活を検討されている方の中には、人工授精について知りたい方も多いのではないでしょうか?でも周りの人には聞きづらい、話しにくい内容だったりしますよね。ここではそんな方に人工授精の成功率やリスク、費用に至るまで、なかなか聞けない情報を詳しくお伝えしていきます。

人工授精(AIH:Artificial Insemination with Husband's Semen)とは

人工授精(AIH:Artificial Insemination with Husband's Semen)とはママの子宮の中にパパの精子を人工的に注入して受精を補助する方法のことです。
自然妊娠では、膣内に射精された一部の精子が子宮頸管を通過して子宮内に到達しますが、この方法では精子を子宮内に直接注入するので、より卵子に到達しやすくなります。

このとき、より確実に排卵を起こすため排卵誘発剤が使われることが多く、排卵を促すhCG注射も使用されます。

人工授精の対象になる方

カップルが子どもを希望していながら妊娠に至らない場合、すぐに人工授精を行うわけではありません。まずは、「タイミング法」といって超音波検査やホルモン検査などを参考にしながらお医者さんが排卵日を推測、指定された日にセックスを行う方法が行われることが多いです。

検査を行っていくにつれ精子の数が少ない、精子が子宮へ進入しにくい、勃起や射精に問題があって腟内ではうまく射精できないなどの原因が判明した場合、または不妊の原因がはっきりしない場合、タイミング法で妊娠しない場合などに人工授精は行われます。

そもそもの妊娠のメカニズムとは?

妊娠までには精子と卵子が出会い、女性の身体の中でいろんなことが起こります。このメカニズム全てがうまくいくことで、初めて妊娠が成り立ちます。何か一つがうまくいかないだけでも妊娠することはできないのです。

1、射精
膣内へ射精された精子は、子宮頸管を通って子宮内から卵管へ移動します。このとき精子はいつでも子宮の中に進入しやすいわけではなく、排卵が近くなって頚管粘液(おりもの)が変化することにより進入できるようになります。

2、排卵
女性の生理がはじまる頃には、卵巣の中に20個ほどの卵子があらわれます。さらにその中の1個だけが成熟して排卵します。 卵巣から飛び出た卵子は、卵管采から卵管に取り込まれます。

3、受精
<精子>
卵管膨大部にたどり着いた精子は、排卵される卵子を待ちます。
<卵子>
排卵後、卵管采から卵管に取り込まれた卵子は、卵管膨大部で精子と出会います。

たくさんの精子が卵子を取り囲み、その中の1個の精子が卵子の周囲の透明帯を破って卵子の中に入ります。その瞬間に卵子に膜が張られ、他の精子は入れなくなります。これが受精です。その後受精した卵は細胞分裂を繰り返しながら、子宮へと移動します。

4、着床
子宮内に到達した受精卵は、排卵から5〜7日目に子宮内膜に入り込んで着床します。

こうして妊娠が成立します。着床後、さらに細胞分裂を繰り返した受精卵は、受精から3週間後に超音波検査で胎嚢が確認できるようになります。

確率(成功率)とは

人工授精で妊娠する確率が上がるのは、精液検査で軽度の障害が見つかった場合やフーナーテストで精子が子宮に進入しにくいと判明した場合などで、目的は着床させることではありません。よって、人工的に子宮内に精子を注入した後は自然に受精するのを待つことになります。
このため、妊娠の確率が自然妊娠に比べて格段に上がるというわけではなく、1回あたり5~10%と言われています。

人工授精で妊娠する方は5~6回までの治療で授かることが多く、それ以上繰り返しても成功率は上がらないという結果が出ているそうです。なので人工授精を繰り返す目安は6周期程度と言われています。

一方、自然妊娠の確率とは?

そもそも、自然妊娠の確率ってどれくらいなのでしょうか?一般的に、妊娠を希望した健康なカップルが積極的に子づくりを行った場合、妊娠する確率は20%と言われています。意外と低い確率だと思いませんか?これは健康な男性や女性であっても、精子や卵子にはある程度の割合で染色体異常があるからということだそうです。

どちらかに染色体異常があると、せっかくタイミングよく精子と卵子が出会っても受精しません。受精したとしても着床しなかったり、流産してしまいます。妊娠するということは、健康で相性のよい精子と卵子がタイミングよく出会う「偶然」で「奇跡」のようなものなのです。

しかし、もちろん妊娠には女性の年齢が大きく影響されます。男性は年齢による妊娠しやすさの差はほとんどないと言われていますが、女性では30歳代後半になるとグッと妊娠率が低くなってしまうとされています。1回の生理で約1000個の卵子が減り続けるというデータもありますので、妊娠を希望するにはより早い時期の方が確率は高いと言えます。

産み分けはできるの?

赤ちゃんは男の子でも女の子でもかわいいのですが、中にはどちらかの性別を希望する方もおられるでしょう。酸性、アルカリ性の性質で男女が決まるとして、いろいろな方法がささやかれていますが、どれをとっても「100%の確率で男女の産み分けができる!」というものはありません。しかし、医療介入によっては比較的高い確率で男女の産み分けを行うことができるという説もあります。

男の子か女の子かはどうやって決まるの?

男の子か女の子かは男性の精子によって決まります。男性の精子の染色体はXX、XYの2種類あり、性別を決定する23組目の遺伝子がXX染色体かXY染色体かによって男女が決まります。XX染色体をもつ精子が卵子に入れば女の子が産まれ、XY染色体をもつ精子が卵子に入れば男の子が生まれるというわけです。

このような性質を利用して、病院によっては人工授精を行う際「パーコール法」という男女産み分け法を行っているところもあります。

パーコール法とは?

パーコール法は、女の子を希望する方に行われる産み分け方法のうちの1つです。こちらは医療行為にあたるので産婦人科で行われますが、男性の精子をパーコール液という液体に入れ遠心分離器にかけ、X精子とY精子を分離し、採取したX精子を子宮に入れるという人工授精のことです。

実はこちらのパーコール法は、安全性の理由から1994年から2006年まで日本産婦人科学会で禁止されていました。ですが2006年4月に日本産婦人科学会は「追試の結果、X精子とY精子を完全に選別することはできない。 よって産み分けできる科学的根拠はない」とし、パーコール法の禁止を撤回しました。とはいえ、「パーコール法の使用を容認するものではない」とも補足されています。

パーコール法は成功率60~70%と言われています。自然妊娠しても男女の生まれてくる確率は50%であるので、こちらをきちんと理解したうえで行うことが必要です。

人工授精の流れ

では実際にどのようにして人工授精は行われるのでしょうか?ここでは気になる人工授精の実施方法と、人工授精を行うまでに行われるさまざまな検査についてお話しします。まずは人工授精を受ける前の検査からご説明します。

人工授精を行うまでに行われる検査

<女性が実施する検査>

■基礎体温測定
まず、基礎体温を測り月経周期や排卵の有無、高温期が持続しているかなどを調べるのに有効な方法です。こちらは朝起きてすぐ、毎日自宅で測って一定の期間記録するものです。

■血液検査
クラミジアなどの感染症の有無、ホルモンや抗体の量などを測るために行います。生理周期によりそれぞれのホルモン量は異なるので、頻回に検査が行われることもあります。

■超音波検査
膣より検査の機械を挿入して子宮や卵巣の様子を観察します。卵胞の発育具合や、子宮内膜の厚さが分かるほか、卵巣腫瘍、子宮内膜症、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫などがないかも分かります。

■卵管造影検査
精子や卵子の通り道となる卵管につまりや狭窄がないか、子宮の内腔に異常がないかを調べる検査です。X線の造影剤を使って行われるのでアレルギーのある方は他のものを使って検査します。

■子宮頸管粘液検査
子宮頸管粘膜(おりもの)について調べる検査です。性交後試験と同時に行い、排卵期に精子が入り込みやすい状態になっているかを確認します。

■性交後試験(フーナーテスト)
排卵直前と思われる時期に性交を行い、その後病院で頸管粘液(おりもの)を採取して精子が十分に子宮内に進入しているか、活動性を維持しているかを見ます。

■抗精子抗体(精子不動化抗体)検査
フーナーテストでおりもの内に精子の存在が見られなかった場合などに方法は血液検査として行われます。精子に対する抗体があるとそれを異物とみなしてしまうため受精できず、体外受精が必要となる場合があります。

このほか、必要であれば子宮鏡検査、腹腔鏡検査などが行われます。

<男性が実施する検査>

■精液検査
精液検査は1回で出される精液の量、濃度、運動している精子の濃度、正常な形態をしている精子の濃度を測定し、自然妊娠が可能か、それとも治療を行った方がいいかを調べる検査です。

人工授精の実施方法

人工授精は排卵日に合わせて行います。

1、超音波や血液検査などの結果をもとにお医者さんが排卵日を予測します。

2、排卵日の前後24時間以内に人工授精が行えるように日時を決定しますが、このとき排卵誘発剤を使うかどうかをあらかじめ決めます。

3、人工授精にむけて、男性の精子をマスターベーションで採取します。できるだけ採取から人工授精の処置までの時間は短い方がよいので、病院によっては採精室が設けられているところもあります。

4、採取した精子をできるだけ早く持参し、診察を受けます。

5、必要があれば(時間があれば)人工授精の前に超音波検査で卵胞の状態を確認します。

6、病院によっては、持参した精子をパーコール法で洗浄することがあります。精液を処理し、人工受精できるように準備します。

7、人工授精を行います。

8、人工授精を行った後はそのまましばらく安静にし、その後の生活上の注意についての説明を受けます。

人工授精を行ったあとは病院で何か処置があるの?

人工授精を行った後は感染予防のため、抗生剤が処方されます。このとき、着床率を高めるために黄体ホルモンの内服を行うことがあります。その後は普段通りに生活していただいて構いません。病院では生理14日目以降に排卵と黄体機能の様子を確認します。人工授精を行った14日後(生理予定日以降)に妊娠判定を血液検査から行います。

人工授精後の過ごし方

人工授精を行った後は、病院でスタッフの方から説明を受けるかと思いますが、基本的に普段の生活と同じように過ごしていただいて構いません。でも、どうせならできるだけ妊娠力を高めるような過ごし方をしたいですよね。
ここでは人工授精後の過ごし方をご紹介します。これはただ人工授精後の過ごし方というよりは、妊娠を希望する女性皆さんに普段の生活に取り入れていただきたいものばかりです。

身体を温める

「冷えは万病のもと」と言いますが、どうして体を冷やすことがそんなにいけないことなのでしょう?
血流は酸素や栄養素、ホルモン、免疫物質などをすべての臓器に運び、二酸化炭素や老廃物を運び出しています。これは子宮に関しても同じことです。もともと生殖器は身体の末端にあるので冷えやすいと言われているので、日ごろから冷え性だと感じている方は特に身体を温めることが必要なのです。

血流が悪いと生殖機能が低下し妊娠しづらくなってしまうと言われています。逆に卵巣の血流量が多いほど卵胞の発育がよくなったり、排卵誘発剤の効き目がよくなったり、子宮の血流量が多いほど着床環境がよくなることは研究によって報告されていることです。よって、血流を良くすることは、妊娠力を上げることにつながります。

具体的にできることは
■身体を冷やさない(冷たいものを摂らない、薄着をしない)
■バランスよく食事をする(特にビタミン類、タンパク質など)
■適度に体を動かす
■カフェインを摂りすぎない

などが挙げられます。

ストレスを溜めない

ストレスを感じると交感神経が優位になるので血管がキュッと収縮し、血流が悪くなります。人工授精を行っていると、結果が出るまでさまざまなことを考えてしまいますよね。でもそのストレスは治療にとってもパートナーとの関係にとってもよくありません。治療後に安静を指示された場合を除いては、近所を散歩したり、パートナーの方とデートに出かけるなど気分転換するといいでしょう。

タバコ、アルコールを控える

タバコは人工授精後にかかわらず、妊活中は避けましょう。喫煙することによって、卵巣の排卵機能の低下を起こすと受精率は低下し、子宮内膜の血流低下を起こすと着床しにくいことも分かっています。
また、仮に妊娠したとしても赤ちゃんへの影響も大きく、必要な酸素や栄養分を運べなくなったり、常位胎盤早期剥離など恐ろしい病気が起こるリスクが高まると言われています。妊娠中から授乳中までは必ず禁煙するように言われますので、妊娠を希望する方は不妊治療を開始するまでにやめておきましょう。

アルコールに関しては、妊娠が判明するまでは完全にやめるようには言われません。飲みすぎには注意してください。飲まないことでストレスが溜まるのであれば、たしなむ程度の量ならよいでしょう。しかし、妊娠が判明してから卒乳するまでは、避けた方が良いかと思います。今はアルコール分が含まれない飲料も増えています。医師と相談して、ご自身の体と赤ちゃんのための行動を心がけましょう。

費用はどのくらい?

人工授精そのものの料金は1回2万円前後

人工授精の費用は、保険が使えず自費診療になるのでそれぞれの病院で値段設定ができます。よって、まちまちですが一般的には人工授精そのものの手技については2万円前後のところが多いようです。実際に支払う料金はこのほか以下のものが加算されます。

■初診料や再診料
お医者さんに診察してもらった場合に発生する料金です。保険扱いでは数百円、自費扱いになると1000~3000円程度。

■各種検査料金
血液検査、おりもの検査、卵管造影検査などそれぞれ料金は自費扱いでは数千円程度。より高度な検査になると万単位を超えてくることも。ただし、こちらは保険診療になる場合もあります。

■男女産み分け「パーコール法」を行った場合、その料金
初回5~6万円、2回目以降2~3万円など、病院によってまちまちです。

■精液の処置料
パーコール法による選別、洗浄、人工授精するための前処理など。こちらは人工授精のセット料金に含まれていることもあります。

■服用薬、注射料金
排卵誘発剤、抗生剤、黄体ホルモンなどの内服薬は1錠数十円~数百円程度。一方注射薬になると数千円~数万円するものも。こちらも保険診療扱いになることもあります。

病院によってはさまざまなオプションがあり、追加するとそれぞれに料金が加算されます。病院のホームページには費用があらかじめ表記されていることも多いのでチェックしてみてください。

不妊治療助成金について

地域によっては不妊治療の費用を一部負担してくれるところもあります。多くの市町村では体外受精、顕微授精に限られるようですが、中には人工授精の費用を負担してくれるところもあるようです。
助成を受けるためにはいくつか条件があり、配偶者間での人工授精に限る、治療開始時に法律上の夫婦となっていることなどがあります。病院で証明書に記入してもらうことも必要で、その場合は文書料が発生する場合もあります。
不妊治療は高額になりますのでこれは嬉しいですよね。お住まいの地域のホームページをぜひチェックしてみてください。

痛みはある?

ほとんど感じないと言われています

内診などで痛みを感じる方は多少の痛みを感じる場合もありますが、一般的には子宮内に挿入するカテーテルはやわらかい樹脂でできており、人工授精による痛みはほとんど感じません。出血も少量ある程度です。術後に痛みが出る方はいますが、排卵痛であることが多いようです。

体外受精について

多くの方はタイミング法、卵管治療を行ったあと人工授精に進みますが、人工授精を6周期まで行っても妊娠の見込みがない場合、多くは次のステップ「体外受精」に進むことが多いです。人工授精に比べ、受精、発育までを行っているので妊娠の成功率が上がります。体外受精は1978年に初めて成功し、日本では1982年から臨床で応用されるようになりました。

体外受精とは体外で人工的に受精させ、発育させた受精卵を子宮内に戻す方法

体外受精は卵子と精子を取り出して、体外で受精させ、ある程度発育させてから女性の子宮へと戻す方法です。正式には「体外受精ー胚移植(IVF-ET)」と言われます。日本産科婦人科学会からの2007年度の報告によると、移植あたりの妊娠率は26.4%、採卵あたりの妊娠率は14.4%です。
体外受精では、原因に合わせて次のような治療が追加されることがあります。

■凍結胚移植
受精卵を凍結保存し、別の周期に使う方法。4分割、8分割、胚盤胞など、どの段階まで培養して凍結するのかはお医者さんによります。また、移植する周期には、理想的な子宮内膜にととのえるホルモン補充周期を行うことが多いようです。

■胚盤胞移植
受精卵を胚盤胞という状態まで(受精から約5日)培養してから、子宮に戻す方法。以前は4分割(2日目)や8分割(3日目)の受精卵を戻していましたが、体外での長期培養が可能になったことで、着床直前に近い状態まで育ててから子宮に戻すことができるようになりました。

■アシステッドハッチング(AHA)
胚が孵化(ハッチング)しやすいように、胚の表面に穴を開けたり、スリットを入れたりする方法。子宮に戻した胚(受精卵)が着床しやすくなるという考え方があり、広く行われています。

■その他
漢方薬を用いたり、アメリカで老化予防のサプリメントとして知られるDHEAをはじめ、サプリメントを治療に取り入れる病院もあります。また、体の血流をよくする遠赤外線の温熱治療器なども活用されます。

体外受精の対象になる方

1、精子の数が少ない、運動率が低いなど男性側に不妊原因がある場合
2、卵管が閉塞している場合
3、抗精子抗体が陽性の場合
4、他の不妊治療ではなかなか妊娠しない場合

また、最近では女性が高年齢である場合など早く妊娠したほうがよいと判断された場合には、他の不妊治療で長期間にならないうちに体外受精に進むなど適応が広がってきています。

体外受精の費用について

体外受精は高度な技術を必要としますので、人工授精に比べ費用も格段に上がります。こちらも保険が使えず自費扱いなので、病院によって料金設定はまちまちです。1回あたり20~60万円程度というところが多いようですが、原因によってはオプションを追加した方がよい場合もあり一概には言えません。

体外受精の場合は地市町村で実施されている「不妊治療助成制度」の対象になります。この場合も対象になる条件はありますが、治療ステージによって上限10~15万円ほど補助される場合もあるようです。こちらもお住まいの地域のホームページなどをチェックしてみてください。

体外受精によるリスク

体外受精は医療介入が増えるので、それに伴いリスクも上がります。ただし、これは体外受精が危険であると言っているのではありません。医療介入にはそれぞれリスクがありますので、総合的に見るとリスクが高くなるということなのです。それらを具体的に挙げてみます。

■採卵に伴う出血や感染
採卵は細い針を用いて卵巣を穿刺し行いますので、まれに出血や感染が見られることがあります。この場合ひどくなると入院や開腹処置を必要とする可能性もあります。

■卵巣過剰刺激症候群
排卵誘発剤の副作用として、こちらの卵巣過剰刺激症候群があります。これはあまりに多くの卵胞が発育すると、卵巣が腫れてお腹や肺に水が溜まったり、身体がむくんだり、その結果尿が出にくくなったり血液の濃度が濃くなって血栓(血のかたまり)ができることがあります。そのため、排卵誘発剤を使用している間は、外来で卵胞発育のチェックや血液検査などを行い、この副作用を発症する恐れが高いと判断された場合は、採卵や体外受精は行っても、受精卵はすべて凍結保存し、胚移植は別の周期に行うなどの処置がとられます。このときはごくまれに入院治療を必要とする場合があります。

■流産、子宮外妊娠
妊娠が成立しても、流産となる可能性が約15%以上あると言われています。こちらは女性の年齢によって変わってきますが、40歳の場合では約40%まで上がります。また、子宮外妊娠の危険性が2〜4%あると言われています。

■多胎妊娠
受精卵を2個移植した場合約15%が双胎(ふたご)になります。それ以上になると女性や赤ちゃんへの負担がかかるので、移植する胚の数は1回につき原則1個、最大で2個までと決まっています。

■胎児の先天異常
体外受精-胚移植により、自然妊娠より先天異常の割合が統計学的にわずかに高くなるという報告があります。安全性に関してはまだ歴史が浅いので、長期の予後を含め、まだ判明していない点もあります。

リスクはあるの?

1、生まれてくる赤ちゃんへのリスク

「人工」という言葉に、赤ちゃんに何か影響が出るのではないかと考えてしまう方もいるかと思います。しかし今まで、胎児の特定の先天異常との関連性は報告されていません。人工授精は、子宮の中に精子を注入する方法で、膣内に射精された精子と同様自分の力で卵子に到達し、その後の経過も自然妊娠と変わりがないため生まれてくる赤ちゃんへの影響はないとされています。

2、人工授精を受ける女性へのリスク

人工授精に使用されるチューブは細く柔らかいため、傷をつけてしまうということはほとんどないようなものになっています。まれに膣内の細菌により感染を起こすことがあるので、それを予防するため処方された抗生剤をきちんと飲むようにしてください。また、処置により出血する場合がありますが、少量であれば心配いりません。
人工授精は女性の身体にあまり負担をかけない治療ですので、リスクについてはそれほど心配することもないでしょう。気になる場合は医師にきちんと相談をし、不安を解消しましょう。

メリットとデメリット

人工授精を行うメリット

1、不妊治療の中では費用が安い
不妊治療は保険が使えないので自費診療扱いで高額になりますが、人工授精はだいたい1回あたり2万円のところが多く、補助金が出る地域ではより負担が軽くなります。

2、女性の身体への負担が少ない
繰り返しになりますが、人工授精は柔らかいカテーテルを使って行われるため、痛みも少なく、出血もほとんど見られず行うことができます。精子を注入した後は自然に任せるため、ほとんど自然妊娠と変わりません。繰り返し行うこともできますが、6回以上実施しても妊娠の確率は上がらないため6回が次のステップに進む目安になります。

3、短時間で行える
精液を処理する時間や人工授精終了後に安静にする時間はありますが、処置自体は数分で終わります。

人工授精を行うデメリット

1、保険が使えないため高額
病気であれば保険が使えるものも、不妊治療では保険が使えないため自費診療になり料金が高額になります。病院によっても料金設定はまちまちで、基準がないためホームページなどで直接比較する必要があります。体外受精などに比べると安いですが、オプションを追加したりするとさらに高額になります。

2、炎症が起こる可能性がある
身体の中に異物を入れ処置を行うので、感染による炎症を起こす可能性があります。予防のため、抗生剤を渡された場合はきちんと内服するようにしてください。

3、妊娠の成功率が5~10%
人工授精は、精子を子宮の中に直接注入するだけなので、その後は精子と卵子の自然な働きに任されます。排卵日をあらかじめ予測してから行われるので、受精の可能性はやみくもに行うより高いですがほぼ自然妊娠と変わりません。

受けるタイミングも大切です

日本でも女性の社会進出が進み、晩婚化によって初産の年齢は年々上がっています。不妊と女性の年齢には深い関連性があると言われています。女性は加齢により妊娠する可能性がどんどん下がっていきますので、いつ不妊治療に踏み切るかタイミングは重要になってきます。たしかに、自分たち夫婦のどちらに原因があるのかを知ることは勇気のいることでしょう。しかし、原因が分かればそれを治療するか医療的に補助してあげることができます。

人工授精は、タイミング法を行った後に行われる最初のステップです。女性への負担も軽く、お子さんに与える影響も今までに報告されていないので、比較的安心して受けることができる治療だと思います。ただ、高度な医療介入が必要になってくるので、信頼できる病院や医師を探すこと、分からないことは医師に質問し納得してから治療を受けるようにしましょう。

妊娠出産はいつでもできるものではないので、ご自身のキャリアや事情もあり簡単に決められるものではありませんが、パートナーとよく話し合い、お互いの希望を踏まえ、今後のことを決めるようにしたいですね。