未成年妊娠、中絶と出産それぞれの道【人気産科医療マンガ『コウノドリ』特集➃】

10月よりテレビドラマ化予定の「コウノドリ」に関する解説記事、第4回の今回は「未成年妊娠」の回をご紹介します。未成年の方だけでなく、その家族の方にも是非読んでいただきたい内容です。

今回の登場人物は?

主人公:鴻鳥 サクラ(こうのとり さくら)

「聖ペルソナ総合医療センター」の産科医。ドラマでは綾野剛さんが演じます。

今回の未成年妊娠の話では赤ちゃん好きであることはもちろん、お腹に赤ちゃんを宿した女性に対しても「幸せになって欲しい」と考えているのだろうなということが伺える台詞が多くあります。その優しい眼差しが必見です!



コウノドリ第4話「未成年妊娠」あらすじ

鴻鳥が妊娠を告げた相手は…なんと制服姿の女子高生!

「野村ミホさん…やはり妊娠していて、現在13週です」

鴻鳥がエコー写真を見ながらそう告げた相手は、制服姿の女子高生でした。

「産めません、多分…」

うつむきがちにそう答える少女に、鴻鳥は「あいては?」と訪ねますが、

「わかりません…」と言うだけでした。

けれど病院前のベンチには、同じく制服姿の少年が彼女を待っています。彼の名前は射場タカシ、ラーメン店を営む父を持つ、ミホの彼氏です。

お腹の子の父親を明かさないまま、両親と中絶手続きに訪れるミホ

結局、ミホは相手の名前を明かさないまま両親を連れて中絶の手続きに訪れます。

鴻鳥から中期中絶のリスクについて説明され、そのことの大きさに動揺を隠せないミホと両親ですが、「今更そんなこと言ってもしょうがない…」と中絶の意思は変わらないようです。

「最後に診察があるので、ご両親は待合室でお待ちください」

鴻鳥の言葉で、ミホを残して退室する両親。二人きりの診察室で、鴻鳥はミホに語りかけます。

「喜んで中絶を受ける女性も、喜んで中絶を行う医師もいません」

「本来なら赤ちゃんに会うための痛みを、死なせるために耐えるんです」

ただうつむいて鴻鳥の言葉を聞いているミホ…。自分の本当の気持ちと向き合うことはできるのでしょうか?

やっと父親に真実を告げたタカシ…ミホの家に謝罪に向かいます

タカシは父一人子一人で育った少年です。父親と二人、ミホの両親に謝罪するため野村家の門をくぐります。

ダイニングテーブルで向かい合う両家。ミホの父親は「自分の部屋に行っていなさい」と言ってミホが部屋から出ていくのを見届けると、

「それで?土下座でもしに来られたんですか?」

と辛辣な言葉をぶつけます。うつむいて冷や汗をかくタカシと、真っ直ぐに見つめ返すタカシの父親。その対象的な表情が、とても印象的です。

ところが中絶の意思と、同意書へのサインを求めるミホの父親に対してタカシは突然、ミホと結婚させて欲しいこと、赤ちゃんを産ませて欲しいことを伝えます。

しかし、タカシの父親は「それを決めるのはこちらのご両親とオレだ!」と言ってそれを許しません。

ミホもリビングへ戻ってきて必死に訴えますが、

「親のスネかじってテメーらで生むことも堕ろすことも決められねぇくせに…」

「お前らのことなんてちっとも可哀想だと思わねぇ」

「一番可哀想なのは、腹ん中の子どもだろ!」

と一喝されてしまいます。泣く泣く同意書にサインするタカシ。手術日は明後日に迫っていますが、ミホは一体どうするのでしょうか。

続きは是非、原作やドラマで!

中絶とは〜中絶の種類と方法〜

人工妊娠中絶と自然妊娠中絶の2種類がある

日本では単純に「中絶」と表現した場合「人工妊娠中絶」を指すことがほとんどですが、実は中絶と呼ばれるものは2種類あります。

その名の通り、人工的に流産や死産を行った場合を「人工妊娠中絶」と呼び、それに対して自然に流産してしまった場合や死産になってしまった場合を「自然妊娠中絶」と呼びます。

ここでは人工妊娠中絶について、少し詳しくご紹介します。

母体保護法:母体を守るため中絶が許される

母体保護法とは、母体の健康上の理由・経済的な理由・あるいは強姦などの暴力行為による場合に人工妊娠中絶を行うと定められている法律です。

未成年妊娠の場合「経済的な理由」から中絶を行うことがほとんどです。

母体保護法

初期中絶:妊娠12週までに行われる

初期中絶は、手術による中絶で1日で終えることができます(経過によっては入院などの場合もあります)。

ちなみに海外では初期中絶以外の中絶(中期以降の中絶)を認めていない国もあります。

中期中絶:妊娠12週以降、22週までに行われる

中期中絶は、子宮の入り口を拡げて人工的に陣痛を誘発させます。通常の分娩と同様に行われるため、数日間の入院が必要となり母乳が出ることもあります。

また、中期中絶後に役所に赤ちゃんの死亡届を提出する必要があります。死亡届が受理されると、火葬許可証が発行され、指定日に赤ちゃんを火葬しなければなりません。

妊娠22週以降の中絶は認められていない

妊娠22週を過ぎると、未熟児として出生した場合でも保育技術により生存できる可能性が出てくるため、中絶は認められていません。

理由としては、人工妊娠中絶の定義が「胎児が子宮外では生存できない時期に、胎児を子宮の外に出す」となっており、生存の可能性がある場合はこれに当たらないからです。



中絶のリスク

初期中絶のリスク(麻酔アレルギー・子宮内感染・子宮穿孔・妊娠組織の遺残など)

初期段階で中絶を行えばリスクがないかというと、そうでもありません。代表的なものに、麻酔によるアレルギーや子宮内感染、子宮穿孔、子宮内に妊娠組織が残ってしまうなどの可能性があります。

●麻酔によるアレルギー:事前に確認があるので、以前に麻酔を使用した際に気分が悪くなったなどの不調があった場合は、きちんと伝えておくことが必要です。

●子宮内感染:通常の出産後同様、子宮内や周辺に細菌感染が生じやすくなり子宮内感染症・骨盤内感染症などを引き起こします。悪化することで子宮腔内癒着や卵管閉塞などの後遺症が残る場合もあります。

●子宮穿孔:手術の際に子宮に穴を開けてしまうことを子宮穿孔と言います。これは胎盤が出なかったり胎盤の一部が残ってしまった場合に、鉗子などを使用して掻き出す際に起きるものです。子宮穿孔が起きた場合、開腹手術を行わなければなりません。

●妊娠組織の遺残:子宮内に胎児の細胞等の取り残しがあった場合、出血がなかなか止まらないなどの症状があらわれます。場合によっては再手術が必要になります。

中期中絶のリスク(子宮頚管裂傷・子宮破裂など)

中期中絶となると初期中絶の際のリスクだけでなく、以下のようなリスクも生じてきます。

●子宮頸管裂傷:出産の際に、胎児が通過することによって子宮の出口である頸管が裂けることを言います。軽度の場合は自然治癒しますが、裂傷が大きい場合や動脈が断裂した場合は出血量が増え危険な状態になる可能性もあります。

●子宮破裂:子宮破裂は、産道が狭い・胎児の位置に異常がある・陣痛が異常に強い・外から強い力が加わった場合などに起こります。この場合、開腹手術を行い患部を縫合したり場合によっては子宮を摘出しなければならなくなります。

不妊症のリスク(子宮摘出・アッシャーマン症候群など)

上記中絶リスクの後遺症などにより、不妊症あるいは妊娠後も流産・早産の可能性が高くなる場合もあります。

●子宮摘出:子宮内感染症などが悪化した場合、最悪子宮摘出を行わなければならないこともあります。

●アッシャーマン症候群:中絶手術を繰り返すことで子宮内が荒れ、癒着を起こす場合があります。これをアッシャーマン症候群と呼び、不妊の原因になるとも言われています。

精神面でのリスク(うつ・中絶後遺症候群など)

精神面・心理面でのリスクとして、うつ症状・PTSD・不眠などの症状があらわれる場合があります。これらの症状がない場合や回復した場合も、将来出産を行い子どもを育てる局面でネグレクトや児童虐待、育児障害などの症状が発症する場合もあります。

中絶後遺症候群とは

中絶の罪悪感から精神的に病んでしまう状態

中絶経験者の約半数にストレス症状が現れることをご存知でしょうか。また全体の20%程度の人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されているそうです。

このように中絶が原因のPTSDをPAS(中絶後遺症候群)と呼び、専門のカウンセリングを行っているところもあります。

中絶後遺症候群の症状

主な症状に「過剰反応」「侵害行為」「抑圧」があります。

●過剰反応…中絶の話題になると身体に不調をきたすなどの症状

●侵害行為…フラッシュバックやうつ状態になるなどの症状

●抑圧…中絶のに関する記憶を無理に忘れようとするなどの症状

こちらにチェックリストがあるので、参考にしてみてください。

中絶後のストレス症状

主な原因

中絶後遺症候群の原因について、「中絶と向き合わないまま、中絶を行ってしまったから」だと鴻鳥は言っています。

「中絶とは、中絶で絶たれた生命を忘れず同じ過ちを繰り返さないコトと、明日から幸せに生きていくための選択でなければならない」

これは母体保護法の根底でもあるように思います。

未成年者の中絶手術

中絶の場合、親の同意書は必要?

未成年者が中絶手術を行う際パートナーはもちろん、お互いの親の同意書が必要になるのが一般的です。しかし実のところ、法律で同意書が必要と定められているわけではありません。

そのため、一部の病院では親の同意書がなくとも手術を受けることが可能です。

なぜ親の同意書を求める病院が多いのか

それではなぜ、ほとんどの病院が未成年者に対して親の同意書を求めるのでしょう。

第一に、大きなリスクをともなう手術であることが挙げられます。命の危険もある人工妊娠中絶を、何の責任も取れない未成年者の意思のみで執り行うことは、医師や病院にとって非常にリスクの高い行為です。

第二に、妊娠中の未成年者のサポートを目的としていると考えられます。親に言いにくい行為であることはわかりますが、中絶という命に関わる決断を未成年者だけで行えば、それ以降の精神的・金銭的負担は計り知れません。

それ以外にも、親や近しい大人に相談することにより、中絶以外の道を選択できる可能性が出てくる場合もあります。

安易に同意書が必要ないクリニックを選択するのではなく、今一度同意書の持つ意味を考えて欲しいと思います。

未成年者の妊娠・出産に関する問題

金銭面での問題

未成年者=学生である場合が多く、自分たちで諸費用を用意することが難しいという問題が挙げられます。それゆえ、そのほとんどを両親に頼ることになりがちです。

学生の場合、退学などの処置がある場合も

学生の場合は、校則などにより停学や退学の処置が行われる場合もあります。もちろん学校によって様々ですが、休学措置などを取って出産後に復学できる学校も一部あるようです。

出産後も多くの問題が

数々の問題を乗り越え無事に出産できたとしても、そこからは子育てという課題が発生します。育児には妊娠中よりはるかに多くのお金がかかりますし、自分の時間のほとんどを子どものために使うことになります。

色々な面で周りのサポートが必要となりますから、未成年者の出産は「妊婦とパートナー2人の問題」ではなく「妊婦とパートナーとその家族みんなの問題」と捉えるべきでしょう。

宿ったのは「命」

命の重さに胸を張れる選択を

未成年妊娠には、記事内では伝えきれないほど多くの問題が内包されています。金銭的な問題はもちろんですが、妊娠に至るまでの経緯やその後の選択は、一概に善悪だけで区別できるような単純なものではありません。

「未成年なのに妊娠すること」が悪いのではなく、「自分たちで責任を負えないのに妊娠してしまった」ことが問題視されているのであって、それは未成年者に限ったことではありません。

ただし未成年者、特に学生の場合はまだまだ自分という不確かな原石を磨き上げている途中にあると言えるのではないでしょうか。それが妊娠や出産によって停止してしまえば、将来手に入れられたであろう様々な物事から遠ざかってしまうことになります。

周りの大人が怒ったり悲しんだりするのはそういった側面があるからで、なにより妊娠した本人を大切に思うからこそなのです。

「赤ちゃんに胸を張れるくらい、幸せになってくださいね」

第4話・未成年妊娠の冒頭で、中絶を行った女性に鴻鳥が向けた言葉です。

どんな選択をしたとしても、正解も不正解もありません。けれどその選択は、自分や家族が幸せになるための選択であって欲しいと願います。

一人で抱え込まず、まずは支えてくれる信頼できる相手に相談してみましょう。自分では考えもしなかった道が拓けるかもしれません。

過去のコウノドリ連載記事はこちら

講談社「モーニング」で連載中の「コウノドリ」という漫画をご存知ですか?青年誌では珍しい産科医療に関する内容を描いた鈴ノ木ユウ先生の漫画です。このコウノドリが2015年10月から綾野剛さん主演でテレビドラマ化することになりました。ここではそんなコウノドリの第1話「受け入れ拒否」に関する内容を紹介します。 10月よりテレビドラマ化予定の「コウノドリ」に関する解説記事、第1回に続き今回はコウノドリ第2話の「切迫流産」についてです。「切迫早産」との違いや、切迫流産の診断を受けた場合の過ごし方もあわせて紹介しています。 10月よりテレビドラマ化予定の「コウノドリ」に関する解説記事、第3回の今回は「喫煙妊婦」を取り上げてみました。「ついつい吸ってしまう」「なかなかやめられない」という人や「私は吸わないけど主人が喫煙者で…」という人のために。