子どもの鼠径ヘルニアどう対処する?症状や手術の可能性について

鼠径ヘルニアは、小腸や大腸などのお腹の中にある臓器が飛び出し、足の付け根にぽっこりと出てくる病気です。脱腸とも呼ばれるこの病気は、子どもの外科手術で最も多い病気と言われています。具体的な症状や手術の可能性、また手術についてなど詳しくご説明しましょう。

鼠径ヘルニアってどんな病気?

脱腸とも呼ばれる鼠径ヘルニア

「鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)」とは、”鼠径部”と呼ばれる足の付け根あたりがぽっこりと腫れたようになるのが大きな特徴です。「脱腸」と呼ばれたり、単に「ヘルニア」と呼ばれることもあります。
足の付け根部分に現れる腫れの正体は、臓器の一部です。そもそも人間の体には様々な臓器があり、健康であれば、それぞれの臓器が決まった場所に納まっています。本来であれば違う場所にあるべき臓器が、骨などの組織の隙間を縫って移動し、飛び出してしまうのが鼠径ヘルニア。「脱腸」と呼ばれるのは、飛び出した臓器が小腸であるケースが非常に多いからですが、女性の場合は卵巣が飛び出すというケースもあります。
では、この鼠径ヘルニアはなぜ起こるのでしょうか。また、どういった治療が必要なのでしょうか。詳しくみていきましょう。



鼠径ヘルニアの原因は?

大人の鼠径ヘルニアは加齢が原因

鼠径ヘルニアは子どもだけでなく大人でもなりうる病気です。大人の鼠径ヘルニアは、加齢などが原因で筋膜のちからが弱くなることが大きな原因。
人のからだ、下腹部には筋膜を貫くような形で「鼠径管」と呼ばれる4㎝ほどの管が通っています。筋膜のちからが弱まると「鼠径管」周辺にすきまができます。その隙間に、次第に腹膜が入り込み袋状になり、鼠径ヘルニアの準備が整います。筋膜のゆるみによって袋状の膜ができている状態でお腹に力を入れたりすると、腸などの臓器が入り込み、鼠径ヘルニアとなると言われています。

鼠径ヘルニアの原因となる筋膜のゆるみは加齢が原因で起こりやすいため、大人の鼠径ヘルニアは中年以降の方に多いと言われています。また、からだのつくりも関係しており、男性の方がなりやすいのも特徴です。

*鼠径管(そけいかん)とは*
鼠径管は男性の場合は精管(精巣で作られた精液を運ぶ管)を、女性では子宮円索(子宮と外陰部を結ぶ細い繊維状のものの集まり)を支えている大事な器官です。

小児の場合は先天性の病気

加齢が原因であるならばなぜ子どもが鼠径ヘルニアになるの?という疑問が浮かびますが、大人のヘルニアが加齢による筋膜のゆるみが大きな原因であるのに対し、子どもの鼠径ヘルニアは先天性の疾患という点で大きく異なります。

小児の鼠径ヘルニアは、ママのお腹にいた胎児の段階(胎生期)に発生した「腹膜状突起」(ふくまくじょうとっき)の内部に、小腸などの臓器が入り込むことで発症します。
この腹膜状突起とは、胎児のときに鼠径部(足の付け根あたり)にできた小さな袋状のでっぱりのこと。胎児の段階で本来ならば閉じるべきだったこの袋の口が開いたまま生まれてしまい、何らかの原因で臓器が入り込むことで鼠径ヘルニアを発症するのです。先天性の病である子どものヘルニアはお腹の中にいる段階で病気の下準備が整っているということになります。

なお、この「腹膜状突起」という言い方は男児のみにされるものです。女児の場合は”Nuck管”と呼ばれる部分に臓器が入り込むことで鼠径ヘルニアを発症します。体のしくみが違うので医学的には少し事情が異なりますが、男女ともに胎児期に原因がある先天的な疾患であるということには変わりありません。

男の子と女の子の違い

鼠径ヘルニアは”脱腸”とも呼ばれるように、小腸が入り込んでしまうケースがほとんどです。その一方で、体の構造が違うため、男児と女児で違いがでることも珍しくはありません。

男の子の場合、鼠径部(足の付け根)から陰嚢にかけてしこりができることがあり、陰嚢の部分まで赤く腫れあがるのが大きな特徴です。また、男児の場合では、「水瘤」(すいりゅう)のような精巣における疾患でも似たような症状が現れることがあるため、他の疾患との区別も重要です。
女の子では、男の子程赤く腫れあがるといったケースはそう多くありません。その一方で、女の子の場合では卵巣が飛び出るというケースも見られます。
また、一般に鼠径ヘルニアは男の子の方が多いと言われていて、生後まもなく発症する例も多いとか。小児外科では最も多いと言われるほど、赤ちゃんをはじめ子どもたちに多い疾患です。

厚生中央病院 | ヘルニア(脱腸)について(一般者向け)
*こちらのサイトを参考とさせていただきました

鼠径ヘルニアの種類について

外鼠径ヘルニア(間接ヘルニア)が大半

鼠径ヘルニアにはいくつか種類がありますが、中でも多いのが「外鼠径ヘルニア」と呼ばれるタイプ。鼠径ヘルニアの中でも、この「外鼠径ヘルニア」が大半を占めると言われています。

「外鼠径ヘルニア」は”間接”ヘルニアとも呼ばれるもので、小児・大人問わず多いタイプのヘルニアです。これに対し、「内鼠径ヘルニア」は”直接”ヘルニアとも呼ばれますが、こちらは中年以上の男性に多いとされます。具体的に表れる症状に大きな違いはなく、小腸などの臓器が飛び出てくる場所が医学的に違うため、このように区別されていると考えられているようです。外鼠径ヘルニアは鼠径内輪を通って小腸が飛び出しているのに対し、内鼠径ヘルニアは鼠径内輪の内側の”鼠径三角”という場所から小腸が押し出されているという違いがあります。

太ももに症状が及ぶ大腿ヘルニア

外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニアに加え、鼠径ヘルニアにはもうひとつ種類があります。それが、足の血管のわきに臓器がはみ出す「大腿ヘルニア」です。大腿ヘルニアは特に、出産経験の多い女性に多いと言われるヘルニアですが、鼠径ヘルニアの中でも一番緊急性が高いとも言われる類のものです。大腿ヘルニアが疑われる場合はすぐにでも医療機関を受診し、手術を受けるなどの処置が必要です。
このようにヘルニアにはいくつか種類がありますが、複数のヘルニアを合併して発症する可能性もあります。



具体的にはどのような症状が?鼠径ヘルニアの症状

鼠径ヘルニアの原因や種類が分かったところで、次に症状についてお話ししましょう。鼠径ヘルニアが疑われる場合、子どもたちにはどのような症状が現れるのでしょうか。子どもたちと一番近いママが病気に気づくために知っておきたい症状をご紹介します。

足の付け根が腫れる

まず、鼠径ヘルニアという名称の通り、この病気は”鼠径部”(そけいぶ)に起こる疾患です。鼠径部とは、つまり足の付け根のこと。赤ちゃんで言うと、ちょうどおむつと太もものラインのあたり、幼児ではパンツのラインが鼠径部になりますね。
鼠径ヘルニアでは、足の付け根の上のあたり、あるいは太ももの上の方がぽっこりと腫れることもあります。男の子の場合は、陰嚢の部分まで赤くなることも珍しくはありません。

腫れの症状は、ヘルニアの初期段階であれば、お腹に力を入れた際や立ったり座ったりしたときに、ぽっこりと膨らむ程度。大人の場合、下腹部で何か臓器がうごくような不快感を感じることもあると言われています。赤ちゃんであれば、泣いたり笑ったりしてお腹に力が入った場合やおむつ替えの際、またお風呂の後などにぽっこりとした腫れが出ることがあります。鼠径ヘルニアの初期では泣いた拍子に腫れが現れ、しばらくすると元に戻ってしまうこともあるため、言葉での意思疎通が難しい乳幼児は気づきにくいかもしれません。

腫れは最初は柔らかいのが特徴

鼠径ヘルニアの腫れは、初期の段階であれば、触ってみると柔らかいのが確認できます。というのも、腫れの中身は小腸などの臓器であるため、ぷよぷよしたような柔らかい感触なのです。
ただし、症状が進み、悪化していくとその腫れが硬くなるのが大きな特徴。硬い腫れは症状が進んでいることのひとつのサインでもあります。腫れの硬さが重要という点は抑えておいた方がいいかもしれませんね。

強い痛みで嘔吐する

先述したように鼠径ヘルニアは初期であれば、飛び出た臓器の部分は柔らかく、腫れを手で押し込むとまた体内に戻ります。腫れ(はみ出た臓器)を触っても、この段階ではまだ痛みもないと言われています。
しかし、症状が進むと強い痛みを感じるようになり、痛みが原因で嘔吐することもあるのが鼠径ヘルニアの特徴です。意思疎通の難しい赤ちゃんでも、「ギャンギャン泣く」という表現がぴったりというほど大泣きします。ママもいつもとは違う赤ちゃんの泣き方に気づくかもしれません。

強い痛みを伴うようになると、お腹の腫れは硬いだけでなく、手で押してもひっこまなくなります。泣き方では気づけなかったというママでも赤ちゃんの異変に気づくことができるでしょう。これは鼠径ヘルニアの症状の第二段階で、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる合併症のひとつです。

腸管など壊死する危険性も伴う

患部が硬くなり、押しても体内へ戻らなくなると痛みを伴うようになり、それと同時に、飛び出た臓器の血流が悪くなります。これは飛び出した臓器(ヘルニアの患部)が狭い部分で締め付けられ、血液が回らなくなっている状態で、最悪の場合は飛び出した部分が壊死してしまうことも。こうなると、緊急手術が必要となり、大変危険な状態になります。
患部の壊死を防ぐためには、腫れが体内に戻らなくなった段階で早めに処置をとる必要があります。

左右両側に症状がみられることも

小児の鼠径ヘルニアの場合、先述したように胎児の段階での発達が原因でおこる疾患です。小児外科では最も多い手術事例と言われるほど子どもには多い病気でもあります。
この鼠径ヘルニアは左右どちらか一方で済むケースが大半ではありますが、両側にヘルニアが見られるケースも少なくはなく、全体の8%という報告も。そのため、たとえば右側に鼠径ヘルニアが認められた場合は左側にもその傾向がないか十分な診断が必要です。なお、両側同時に発症することもあれば、発症し腫れができたのは右で、左側は発症の”可能性”に留まる(小腸など臓器が入り込む場所がすでにあり、いつヘルニアを起こしてもおかしくない状態)というケースも多く、その場合は発症する危険性があります。
また、鼠径ヘルニアの場所は患者によって異なりますが、左右どちらかに発症するという場合では、一般に左よりも右側に症状が見られるケースが多いと言われています。

腸管等が壊死する恐れも「小児鼠径ヘルニア」 | 小児鼠径ヘルニア | 対応疾患 | 消化器外科・小児外科 | 診療部門のご案内 | 東京医科大学病院
東京医科大学病院(東京都新宿区)は、21世紀の新しい医療提供の姿を追い求めます。 *こちらのサイトを参考とさせていただきました

鼠径ヘルニア、陰嚢水腫|慶應義塾大学病院 KOMPAS
KOMPASは慶應義塾大学病院の医師、スタッフが作成したオリジナルの医療・健康情報です。患者さんとそのご家族の皆さんへ、病気、検査、栄養、くすりなど、広く医療と健康に関わる情報を提供しております。 *こちらのサイトを参考とさせていただきました

鼠径ヘルニアはどう治す?治療法について

鼠径ヘルニアの診断

赤ちゃんのお世話でお腹(足の付け根あたり)にぽっこりとした腫れを確認した場合はすぐに小児科を受診しましょう。初期の段階では腫れが出たり入ったりを繰り返すことがあるため、診察時にぽっこりとした腫れが出ていない場合もあり得ます。しかし必ずしもヘルニアの症状が目で見て確認できる状態ではなくても診断は可能です。
一般的にはママへの問診と合わせて、医師による触診や超音波検査などで診断が行われます。超音波検査とは、お腹の上で機械を滑らせるようにして検査するいわゆるエコー検査。痛みを伴うものではないので安心です。

鼠径ヘルニアの治療法は手術のみ

最初にお話ししておくと、鼠径ヘルニアと診断された場合の具体的な治療法は外科手術しかありません。小児の鼠径ヘルニアの場合は、小腸などの臓器が入り込んでいる”袋”の口を手術で閉じてしまう手術が行われます。まず、薬の投与では治癒できる病気ではないというのは覚えておきたい点です。

鼠径ヘルニアの治療は「手術をいつ行うのか」というのが最大のポイント。病気が発覚し、すぐにでも手術を行うのか、それとも時期を調整するのかというのは医師や病院によっても対応が異なるものなのです。

経過を見ながら、自然治癒を待つ?

鼠径ヘルニアはぷっくりと膨らんだ腫れの部分を押すと、お腹の中に戻ることがあります。医師によって判断に差がありますが、鼠径ヘルニアの患部が小さく、お腹の中に押し戻せるなど症状が軽い段階ではこのまま様子を見るというケースも。

小児の鼠径ヘルニアは4ヶ月以内であれば、手で押し戻す行為を繰り返していると、自然治癒する可能性もあると言われています。経過観察を促す医師がいるのは自然に治る可能性を見越してのことです。かかる医師の判断によるところもあるかと思いますので、きちんとかかりつけの医師の判断を仰ぎましょう。

嵌頓(かんとん)を起こし、緊急手術になることも

「生後4ヶ月以内であれば自然治癒の可能性がある」と言われる一方で、生後半年までは特に嵌頓(かんとん)を引き起こしやすい時期という見識もあります。
先に少しお話ししましたが、飛び出た臓器(腫れの部分)が狭い場所にはまってしまい元に戻らなくなることがあります。これは鼠径ヘルニアの第二段階の症状で、「嵌頓(かんとん)期」と呼ばれます。嵌頓を起こしてしまうと、飛び出た臓器に十分な血液が回らない状態に。血液が回らないと患部が壊死してしまう危険性があります。同時に強い痛みを伴うようになるため、鼠径ヘルニアでは最も注意すべき合併症です。患部の壊死を防ぐためには、嵌頓を起こすとすぐにでも手術が必要となるため、入院対応・緊急手術が行われることになります。
こうした合併症の危険性が伴うことから、生後間もない時期であっても、「経過観察をしながら自然治癒を待つ」という方法ではなく、「すぐにでも手術を」という方針の医師も少なくはありません。

原則としては、すぐにでも手術を行うのが一般的

結局のところ、経過観察をするのとすぐに手術を行うのとどちらがよいのでしょうか。

経過観察をし、自然に病気が治癒すれば子どもの体にメスを入れる必要もなく、一番いい方法にも思えます。しかし、嵌頓を起こし、腫れを押しても臓器が体内に戻らない状態になると緊急手術の可能性がある鼠径ヘルニア。手術に緊急を要する状況というのは、少なからず患者の体にも危険が伴うということです。つまり、計画手術よりも危険性が高いという見方もできます。
鼠径ヘルニアは経過観察することで嵌頓・緊急手術の可能性が高くなることから、原則としては診断され次第、手術を計画するのが原則と言われています。薬などで治療する方法はないため、最初から計画的に手術を行った方が、子どもの体への影響も最小限で済むというわけです。
「計画的に手術を行う」と言っても、ヘルニアを専門的に扱うクリニック・小児外科を専門的に扱う大きな病院というように、診断を受けた病院によって手術が可能な年齢が異なります。「出生後すぐに手術を」という場合もあれば、「1歳以降の手術にのみ対応している」という病院まで様々です。

経過観察・即手術、どちらの選択をする場合でも、家族が納得できる選択をするのが大切。経過観察・手術どちらにも多かれ少なかれ危険性が伴います。不安な点は十分に確認し、医師に説明してもらうようにしましょう。

鼠径ヘルニア、陰嚢水腫|慶應義塾大学病院 KOMPAS
KOMPASは慶應義塾大学病院の医師、スタッフが作成したオリジナルの医療・健康情報です。患者さんとそのご家族の皆さんへ、病気、検査、栄養、くすりなど、広く医療と健康に関わる情報を提供しております。

腸管等が壊死する恐れも「小児鼠径ヘルニア」 | 小児鼠径ヘルニア | 対応疾患 | 消化器外科・小児外科 | 診療部門のご案内 | 東京医科大学病院
東京医科大学病院(東京都新宿区)は、21世紀の新しい医療提供の姿を追い求めます。 *こちらのサイトを参考とさせていただきました

鼠径ヘルニアの手術について

高位結紮法(こういけっさつほう)と呼ばれる手術方式

鼠径ヘルニアの手術法では、まず「高位結紮法(こういけっさつほう」と呼ばれる術式が一般的です。この「高位結紮法」とは、腹膜の出口(ヘルニアの袋の口の部分)を糸で縛って、小腸など臓器の入り込む”口”を閉鎖するという方法です。手術に使用される糸は自然に溶けて吸収されるものを使用した手術が一般的で、手術後に体内に異物が残らない手術が主流です。症状によっても異なりますが、手術時間も30分程度と短時間で済むケースがほとんどと言われています。
また、手術で切開した部分は糸で縫合するのではなく、手術用のテープや接着剤によって閉創されるケースが近年では一般的です。そのため、手術後の消毒・抜糸といったケアは不要となるケースが増えています。仮に患部を手で触ったとしても安心です。

近年では腹腔鏡による手術も増加

高位結紮法が最も一般的な術式ですが、ここ数年医療技術が発達したことで腹腔鏡による手術も増えています。
腹腔鏡とは、お腹の中に入れる内視鏡の医療器具のことでいわば”カメラ”。このカメラを体内に入れ、内部を確認しながら手術を行う方法のことです。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの手術では、おへそのあたりからカメラを挿入し、鼠径部(足の付け根)からヘルニアの”袋”の口の部分を縛るための糸を入れて、カメラの映像を確認しながら、手術が行われます。

この腹腔鏡手術の大きなメリットは傷が小さく済むこと。直径3mmのカメラが入る程度の傷は術後は目立たなくなるのが大きな特徴です。その一方で、腹腔鏡手術の設備はもちろんのこと、カメラを見ながらの手術には医師の技術も必要であるため、限られたクリニックでしか受けることができません。なお、腹腔鏡手術の方が確かに傷は小さいですが、従来の方法でも鼠径ヘルニアは傷が小さく済みます。そのため、「お腹に大きな傷が残ったら」「手術の痕が目立ったらどうしよう」というような心配はさほどいらないでしょう。

手術そのものは短時間。日帰りで手術を行うことも。

先述したように、鼠径ヘルニアの手術は30分程度、短い場合は15分で終わるというケースもあるほど短時間の手術です。全身麻酔で手術を行う場合でも、午前中に手術をし、経過に問題がなければ当日夕方には退院可とする「日帰り手術」を行う病院も少なくはありません。(この場合、回復するまでに病院内で数時間は待機することになります。)また、小児の鼠径ヘルニア手術は、手術前日に入院し、手術の翌日に退院するという2泊3日の病院もあります。

なお、入院日数に関しては、病院の方針の違いもありますが、子どもの体力によっても左右されます。生後間もない赤ちゃんや乳児の場合は念のために入院して、しばらく様子を見るケースも少なくはありませんし、持病の有無によっても入院泊数は変わってきます。

術後の生活について

手術・退院後は翌日から学校や幼稚園・保育園に通うことができるのが一般的。土曜日に日帰り手術を受ける場合でしたら、学校を休まずに手術を受けることも可能です。ただし、運動には多少の制限がありますので、退院時の医師の指示に従いましょう。経過に問題がない場合でも、体育・体操をはじめとした運動やプールなどはしばらくお休みすることになるでしょう。

数日間は湯船につかる入浴はできないものの、シャワー浴に関しては手術の翌日から可能です。そのほか、食事による制限もないため、術後もほとんど生活には支障がないものと考えてよいでしょう。腹腔鏡による手術ではない場合でも、鼠径ヘルニアの手術では切開するのはほんのわずかで済みます。そのため、成長とともに傷もほとんど目立たなくなるので心配はいりません。

小児そけいヘルニア | みやざき外科・ヘルニアクリニック
小児そけいヘルニアとは、本来閉じるはずの腹膜の袋(腹膜鞘状突起といいます)が、そけい部で開いたまま生まれてくる状態で、小腸や卵巣が入り込んでそけい部が膨らんでくる病気です *こちらのサイトを参考とさせていただきました

川崎医科大学 小児外科教室 鼠径ヘルニアとは
*こちらのサイトを参考とさせていただきました

子どもの鼠径ヘルニア、再発の可能性は?

反対側のヘルニアに要注意

鼠径ヘルニアの手術を行った後、同じ場所で再度ヘルニアを起こすという心配はいりませんが、反対側でヘルニアを発症するケースがあります。鼠径ヘルニアは左右どちらか一方で起きることもあれば、両側で発症することも珍しくはないのです。

鼠径ヘルニアが両側で発症するという場合、両方同時に発症することもありますが、右側の鼠径ヘルニアの手術をした後、次に左側で鼠径ヘルニアを発症するというように発症時期に差があるケースも。この場合、1度目の手術から1年後という方も居れば、10年以上経ってから発症するという患者さんまで様々です。
このような事例は「対側発症」と呼ばれていて、全体の5~10%で起きると言われています。親や兄弟など近親者で鼠径ヘルニアにかかったことがある方がいると、この対側発症を起こしやすいということが分かっているため、家族に鼠径ヘルニアの方がいた場合はより一層警戒が必要です。

手術の際に確認するのが一般的

鼠径ヘルニアの対側発症を防ぐためには、1度目の手術を受ける際に、手術とは反対の側にも鼠径ヘルニアの兆候が見られないかの確認を行うのが一般的です。その診断の基準となるのが「腹膜状突起」(女児の場合は「Nuck管」)。小児の鼠径ヘルニアは、その腹膜状突起と呼ばれる袋状の部分に小腸などの臓器が入り込むことで発症します。そのため、腹膜状突起が見られる場合は、今後その袋の中に臓器が入り込まないように、1度目の手術でこの袋もとじてしまう処置をする必要があります。

手術の術式にもよりますが、腹腔鏡による手術の場合は、手術と同時に体内に入れたカメラを使用して、手術する側とは反対の側にも、鼠径ヘルニアの原因となる腹膜状突起がないか確認します。開腹手術の場合でも腹腔鏡を使用して確認するのが一般的です。

鼠径ヘルニアと似た病気「水瘤」について

「水瘤」(すいりゅう)とは

鼠径ヘルニアと似た症状の病気に「水瘤」(すいりゅう)と呼ばれるものがあります。水瘤は、できる場所によって「精巣水瘤(陰のう水腫)」「精索水瘤」というように名称が変わります。この水瘤は、鼠径ヘルニアの原因となる「腹膜状突起」と呼ばれる部分に水が溜まる病気です。ヘルニアの場合は、ポッコリと腫れた部分の中身が小腸などの臓器、水瘤はその中身が水分というのが違いです。

腹膜状突起(いわば”袋”)の口の部分が大きく開いている場合は、小腸などの臓器が入り込む鼠径ヘルニアになりやすく、口の部分が小さい場合には水が溜まる水瘤を起こしやすいと言われています。なお、水瘤では症状によって、腹膜状突起の口が完全に閉鎖しているという場合もあります。
触診(触ると水瘤がやや柔らかい)・明かり(懐中電灯で透かすと睾丸がきれいに見える)による診断のほか、超音波検査でより精密な状態を知ることもできます。針で内用液を確認するという検査が用いられる場合もあります。

水瘤は痛みもなく、押しても変化しない

鼠径ヘルニアと水瘤ではそもそも、腹膜状突起の中身が違うというのが大きなポイントですが、症状にも違いがあります。

水瘤は大きくても痛くないのが大きな特徴です。膨らんだ部分を触ったり押したりしても、腫れの大きさが変わるようなことはありません。なお、腹膜状突起の口が開いている場合は、朝は腫れが小さく夜になるにつれて腫れが大きくなるというケースはあります。
一方、鼠径ヘルニアの場合は泣いたりしてお腹に力が入ると大きさが変わったり、痛みで泣いたり嘔吐したりすることがあります。

緊急性が低く、自然治癒の可能性が高い水瘤

鼠径ヘルニアは嵌頓(かんとん)と呼ばれる合併症により、飛び出ている臓器が壊死する危険性を伴うため、計画的に手術を行うよう段取りがなされるのが一般的です。

一方、水瘤の場合は膨らみの大きさや状態にもよりますが、大抵の場合は緊急性はありません。既に袋の口が閉じている「非交通性」と言われる水瘤は1~2歳の間で自然に消滅すると言われています。なお、膨らみが硬く緊満している場合は、精巣捻転・精巣上体炎など他の疾患も疑われます。精巣の変形が起きたり、将来の生殖機能への影響も懸念されるため、症状によっては手術が勧められることもあります。水瘤は赤ちゃんにはよくある疾患と言われることもありますが、決して軽視できる病気ではないということも覚えておいた方がよいかもしれませんね。

日本小児泌尿器科学会
日本小児泌尿器科学会 *こちらのサイトを参考とさせていただきました

毎日のお世話で体のチェックを

鼠径ヘルニアは初期の段階では、押すと腫れが体の中に戻るため、ママが気づかないうちに症状が現れていることもあります。泣いている時にお腹からぽっこり出てくることが多く、赤ちゃんの顔を見てあやしていたら服を着ている状態ではわかりにくいかもしれません。

赤ちゃんの体は毎日変化します。お風呂上りやおむつ替え、お着換えなど赤ちゃんの体に触れるタイミングで体の様々な場所をチェックするようにしているといいかもしれませんね。ただ見ているだけより、撫でるように手のひらをつかって触っていると、変化に気づきやすいものです。些細な変化でも、小児科の先生や保健師さんなどに相談するようにしておくと安心です。
赤ちゃんはママの手が大好きなので、赤ちゃんの体をただ触るだけでもコミュニケーションにもなりますが、ベビーマッサージのようにゆっくりと撫でたり触れたりすると、赤ちゃんの健康チェックもできるので一石二鳥かもしれませんね。